第六十三話
城へと入って、騎士団の訓練所に行くと、新人の訓練が行われていた。いつの間にか、そんな時期になっていたのか。新人の加入は、基本的に四ノ月だ。加入にかかる時間はまちまちなので、厳密に決まっているわけではないが、だいたい同じだ。
俺は、現在、パティル様付きの騎士なので、朝城に入ったら、最初に彼女を迎えに行く。そして、訓練もほとんどしないで、彼女の側にずっといるのだ。まぁ、彼女が剣術とかを好きなので、俺もそれに付き合ってやっているんだが。
それはさておき、俺はそんな新人を横目に見ながら城へと入る。俺のようなイレギュラーはいないようで、新人いびりみたいなのも無いようだ。騎士団長がレンドさんなら当然か。
城の内部は簡単に奥へ行くことが出来ないように、曲がり角が多い設計となっている。俺は何度も通っているので、大半の道は覚えたが、まだ俺の行ったことのない部屋もあるようだ。しかし、場所は分からない。
時折すれ違うメイドさんとも挨拶をする。毎日同じように会っているので、顔見知りになってしまった。たまに、挨拶だけではなく、面白い話なんかも教えてくれる。重要な情報とかも混じっているので、聞き逃すことは出来ない。
そんな風に、城の中の人と交流しながら歩いていくと、パティルの部屋まで辿り着いた。以前、一度だけノックをすることを忘れて、着替え中に入ってしまうという事件があったので、しっかりノックをして、入室してもいいか確認する。
「おはよう。カーディルだよ。入れて」
「勝手に入っていいですよ」
中から、入っていいと許可を貰う。勝手に入っていいって、いくら俺だからって、そんな適当にして良いのかよと思う。そんなんだから拐われてしまうんだ。
「入るよ」
パティルの部屋に入る。パティルの部屋は、女の子の部屋にしては実用的な作りになっている。家具なども、質の良い物だが、装飾などは少ない。初めて入った時に、女の子の部屋だぁ、と思って入ったが、可愛い物とかが少なくて、実は違う部屋なんじゃないかと最初の頃は疑っていた。
「おはようございます。カーディル君」
今日のパティルは、ヒラヒラとしたドレスを着ていた。瞳と髪と同じ橙色で、パティルにとても合っていた。
「おはよう、パティル。今日はどうしたの? そんなヒラヒラとしたドレスなんて着て」
酷い言い草かもしれないが、本音だ。パティルは、部屋と同じように、実用的で、動きやすい服を好む。剣術などをすることが多いから、動きにくい服を着るのがあまり好きではないらしい。
「今日は、侯爵家で、婚姻の披露宴があるんです。その為に、先に着てみたんです。どうですか?」
「似合ってると思うよ」
そうか、侯爵家でパーティーか。それでねぇ。
「カーディル君にも出席してもらいますから、その格好から着替えてもらいますよ」
「え? なんで僕が?」
俺の家は、男爵家だ。侯爵家のパーティーに出られるような立場では無いんだが。
「なんでって、惚けてるんですか? お姫様を救った英雄さん?」
そういうことか。つまり、功績がある人とお知り合いになりたいと。
「分かったよ。でも、着替えるのは後でね」
俺が今着ているのは、王族専属騎士用の鎧だ。護衛するのに、鎧を外すのは良くない。
「始まるまでに着替えれば良いですよ。きちんとした格好になってくださいね。私の側付きっていう意味もあるんですから」
「分かった」
今日は訓練は出来そうにないな。と、始まるまでになんて言っていながら、披露宴に何を着るか決めるために、着替えさせられていた俺は思った。




