第六十話
この世界を救ってほしい。それを聞いた俺は、不思議と、有り得ないとか、そういう感じはしなかった。何でだろう、これまで、そんな話は無かったはずなんだが。
「そうですか」
そう返すと、意外そうな顔をされた。
「もっと驚くと思ったのですが、驚かないのですね」
「いや、よくわからないんですけど、不思議と納得出来るんですよね」
そう言うと、セリナリア様は勝手に納得していた。
「まぁ、そういうこともあるのでしょう」
どういうことなのだろうか。まぁいい。
「でも、実際、なんで僕なんですか?」
納得は出来ても、何故俺なのかという疑問はある。
「それは、貴方の元の世界での体質が理由です」
体質?
「貴方は、元の世界で、神の愛し子という者でした。神の愛し子というのは、その時代に必ず一人しかいない、その世界の法則から外れた事を、一つだけ出来る者のことです」
法則にから外れた、か。
「それが僕だったんですか?」
「そうです。貴方にも、覚えがあるのではないですか?」
なんだ? 魔粒子が見えることか? それなら分かるんだが。
「魔法の元みたいな物が見えることですか?」
「違います。それは極稀にいるこの世界の体質です。貴方の元いた世界は関係無いでしょう」
む、それもそうか。じゃあ何だろう。
「分からないのですか? 今まで何度か助けられたはずなのですが」
「すみません。分からないです」
「貴方は、少しの時間ですが、時間を停止させることが出来ます。以前にも時間が止まったことがあったでしょう?」
「時間を止められたんですか!? 僕が!?」
そういえば、思い当たる節はある。帝都でも、一回時間が止まったようになった気がする。あとは、リンちゃんが攻撃してきた時と、この世界に来る直前にもあったか。あれって体質だったのか。
「貴方は、一日一度、体感時間で十秒間、時間を止めることが出来ます」
そうだったのか。知らんかった。自分の事なのにな。
というか、本当に知らなかったんだが。やり方とか全く知らんぞ。
「それって、どうやれば出来るんですか?」
「え......?」
セリナリア様は、何でそんなことも知らないんだ、という顔をした。え......? どういうこと?
「どうしたんですか?」
俺がそう声をかけると、セリナリア様は、ハッとして姿勢を正した。
「いえ、本当にどう行うのか知らないのですか?」
「はい」
そう言うと、セリナリア様は、じっと考え込んだ。考える人見たいな格好だ。あんまり格好よくはないあの格好も、美人がやると絵になるな。
「まぁ、いいでしょう」
セリナリア様は、自分で何らかの形で納得したようだ。




