第五十七話
パティルを抱き抱えながら飛ぶ。眼下には、森林や、畑や、川や、街など、様々なものが、後方へと流れていく。行きの時は見る余裕も無かったが、改めて見ると、前の世界では見なかった、雄大な自然があると思った。
最初は慌てふためいていたパティルも、今は落ち着いて、下の景色を楽しむ余裕も出ている。
「カーディル君」
下の景色を自分も楽しんでいると、腕の中のパティルが俺を呼んだ。
「何?」
パティルの顔は、下の景色に向けられていて、俺からでは頭しか見えない。
「助けに来てくれてありがとう」
改めて言われると、なんか照れるな。
「どういたしまして」
うーん、どういたしましてって言うのも結構照れるな。
「知らない所に突然いて、訳のわからない事になっていたときに、来てくれたのは、とても嬉しかったです」
パティルは、そう言うと、俺の方へ顔を向ける。その顔は、真っ赤に染まっていた。
「助けに来てくれたとき、カーディル君が、とっても格好よく見えました」
そんなことを言われた俺は、顔に熱を感じた。もしかしたら、顔が赤くなっているのかもしれない。
すると、パティルは、俺に抱えられている体を起こして、俺の首に腕を回した。そして、俺の頬にキスを落とした。
「ちょっとしたお礼です。勘違いしないでくださいね」
焦ったようにそれだけ言って、また下を向いてしまった。
え? どういうこと? 何されたの俺? え? ......え?
そんなことをされた俺は混乱の中に落とされた。当然だろう。あんなことをされたら、誰だって混乱する。
俺には、まぁ、そういう気持ちは無くはないけど、なんでって、そりゃあ可愛いし、強がりなところとかもどストライクだけど、それに、そうでなかったらここまで激怒はしなかったと思うし。俺、そんなことされたら間違っちゃいそうだ。いや、間違わないけど。
「わぁ! あれは何でしょう!」
パティルが、森の方に指を指しながら、無邪気な声をあげたのを聞いて、混乱は解けた。
「なんだろう、あれ。ゴリラに似てる」
「ゴリラってなんですか?」
まだまだ時間はあるし、これから分かるだろう。そう思った。




