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第五十話

 私には、名前よりも肩書きの方が耳に残りました。皇帝、それはつまり帝国の最高権力者であるということです。そして、私をここまで連れてきたのが帝国だということでもあります。


「ここは何処なんですか」


 相手が誰であるかを考えれば、分からない事ではないですが、一晩で連れてこられるような距離ではないはずです。しかし、予想は悪い方で裏切られました。


「ここは帝都だよ。今更だけど、カロンド城にようこそ」


 帝都。そこは、私の住んでいる王都のサロメンド城から、早馬でも一ヶ月は向かうのに必要な程に遠い場所です。


「ここまでどうやって、ていう顔をしているね。それを教えてあげることは、本当ならしてはいけないんだけど、特別に教えてあげよう」


 そこまで言うと、突然ルークは消えました。


「こっちだよ」


 私のすぐ後ろで声が突然しました。あまりに突然だったので後ろに向けて拳を振るってしまいました。


「危ない王女様だなぁ」


 私は、普通の男性よりも鍛えている(そんな王女でいいのかというのは無視します)のですが、アッサリと止められていました。最悪皇帝を倒して逃げることも考えていたのですが、それが不可能ということが分かってしまいました。


「とまぁ、こんな風に全く別な所へ一瞬で行く魔法、転移魔法が開発されたからさ。一瞬で王都からここまで来れたわけ。魔法自体は教えないけどね」


 転移魔法。何処へでも一瞬で行くことが出来るという、神話の魔法です。実在はしない、もしくは神しか使えないとされていた最高峰の魔法です。


「でも、実際この魔法使いづらいんだよね。決まったところにしか行けないし、短距離でもごっそり魔力を奪っていくし。もっと改良しないと使い物にならない」


 しかし、そんな魔法をルークはまるで、普通の魔法と同じように扱っています。そのことに、どれだけの実力の差が広がっているのかが分かりました。私は、現在宮廷魔法師の半分くらいの実力しかありません。しかし、その宮廷魔法師でも、転移魔法は使えないと思います。王国全土を見ても、使えそうな人はいないと思います。


 そこで、ある一人の青年を思い出しました。彼なら使えるかもしれない。そう思いました。彼を思い出して、彼ならここまで連れ戻しに来てくれるのではないか、そうも想いました。


「そうそう、こんな長話している場合じゃ無いんだった。僕から、貴女へ、一つのお願いがあります」


 さっきまで、少し軽い雰囲気だったのが、真面目な雰囲気になった。ここから何を話すのかは知れないが、今の軟禁状態に関係することなのは間違いない。


「貴女に私、ルーク・リドアールの元へ、嫁に来ては頂けないだろうか」


 へ? 今この男は何て言いましたか?


「私のお妃になっては頂けないだろうか」


 もう一度言いましたよこの男。


「どういう意味だか、仰る意味が分かりません」


「どういう意味も、そのままだよ」


「お断りします」


 どういう意図で言っているんだか知らないですが、突然今日あった人に"はい"という人は居ないでしょう。


「取り敢えず、貴女の立場をお教え致しましょう。今貴女は、我がリドアール帝国がメシア王国の人質として、預かっているという状態だ。そして、属国になれと迫っている。しかし、貴女を見て僕の考えも変わった。とても美しい貴女を妃に呼べるのであれば、属国にはしなくていいと考えている。つまり、貴女が"はい"と言うだけで、王国と帝国の関係を良好にすることまでできるという事です。ここまで言われても、"はい"とは言えませんか? パティル・メシア王女様? そうだ。今、僕の軍隊が国境沿いにいるって事も知っておいた方が良いね」


 ここまで言われて、私は気が付きました。自分がどの様な立場にいるのかを。つまり、私は囚われの姫で、私が"自分の意思で"来ているのであれば、その囚われのという部分がなくなり、嫁に来た異国の姫、ということになります。そして、ならないのならば、最初の考えだった、私を人質にした帝国が、王国へ属国になれと迫る。というのが実施されるのでしょう。そして、それを断ったのならば、国境沿いにいる軍が攻めいることになるのでしょう。つまりは、私の選択に国が懸かっているということです。


「さぁ、返事をしてください。"はい"か"いいえ"どちらかを」


 私は決心しました。どのみち、政略結婚が待っている身だったので、こんなところで役に立てるのなら、国にも恩返しが出来るというものです。一つだけ、心に残っているとすれば、あの青年と、別れを告げられなかったことです。


「私は......」


 もし会える日が来るならば、また、他愛ない話をしてみたいです。


「あな「侵入者です!!!」」


 そのとき、兵士のような格好をした人が、この部屋に慌てて入ってきました。


「誰だか分かっているのか?」


 ルークは、皇帝の顔になってそう問います。


「王国の服を着ていたので、王国の兵かと思われます」


 え!? こんなところまで来ている人がいるの!?


「分かった。鎮圧に力を注げ」


「了解です」


 その兵士は、それだけ言って、扉の外へ出ました。


「ギャー!」


 しかし、その一瞬後に、扉を吹っ飛ばして、再び入ってきました。すると、何者かの影が私とルークの間に入りました。


「おい、てめぇ、どこの誰に嫁になれとか言ってやがるんだ?」


 私の最も好きな声が私に届きました。


「君こそ、何処の誰に喧嘩を売っているのか分かった方がいいんじゃない?」


 そんな変な声は気に止めることすらありません。


 扉を壊したときに出た埃に包まれた体が、魔法で埃を吹き飛ばされることで露になる。


 そこには、最も愛しい人が立っていました。


「カーディル君!」


 そう呼ぶと、彼はこちらへ顔を向けました。


「ごめん。遅くなった」

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