表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/153

第百五十話

 魔王と朝食を共に食べてから、俺と初夏はマケルスト城を後にする事を決めた。魔王にそれを話すと、予想に反してすんなりと城を出る事を許してくれた。あれだけの歓迎具合だったので、拘束してでも留めさせると言われると思っていたので、正直拍子抜けだった。


 出る事が許されたのなら、出るのは早ければ早いほど良いと、すぐに出発する事になった。その際、魔王の計らいで、何百もの兵士と、魔王本人が見送りをする事になった。まるで、国賓のような扱いである。


「おい、お前ら。今度来るときは、他の奴らも連れてくんだぞ! というか、ぜってー来いよ。分かったな?」


 魔王様による、有り難いお言葉であった。簡単に帰してくれると思っていたら、最初からこれが目的だったようだ。はいともいいえとも言えず、曖昧な笑みを返しておく。しかし、初夏はそうではなかった。


「いや、もう来ないだろうな。そもそも、向こうから来るのも結構大変なんだぞ? そんなに簡単に行き来出来てたまるか」


 まさかの完全否定だった。それを聞いた魔王が不機嫌そうな顔になる。


「なんだと? 折角なくしてやった侵攻の話を元に戻しても良いんだぞ? それでも来ないって言うのか?」


 完全に脅し文句である。しかし、それを無視は出来なかったのか、初夏はチッと舌打ちする。


「分かった。それなりに向こうが片付いたら来る」


「クックック、それでいいんだよ」


 魔王は、今度こそ満足げに嗤った。邪悪な笑みである。正に魔王であった。そして、さらにその笑みが深くなる。嫌な予感がする。


「それと、ついでにこいつも向こうに連れてってくれや。一応、こっちからの親善大使としてな!」


 そう言って後ろ手に腕を伸ばすと、ひょいと一人の人間を前に出した。その人物は、リンちゃんだった。


「えっと……よろしくお願いいたします?」


 リンちゃんは、メイド姿ではなく、動きやすそうな格好に着替えていた。その背中には、大きなリュックが背負われている。


「それはいいけど、なんで疑問形なの?」


「えっと、長期滞在の準備をしておけと言われただけで、何をすればいいのか聞いていないからなんですけど……」


 そう言いながら、リンちゃんは魔王の方を見る。説明すらされていなかったと聞いて、俺も魔王にジト目を送る。


「何をすればいいかなんて、向こう行きゃあ分かんだろ。親善大使として、それっぽい事しとけ」


 なんとも、適当な命令だ。行けという事以外は、何も分からない。しかし、リンちゃんはそんな命令に頷いた。その表情は、呆れたといった様子だった。


「分かりました。取り敢えず、向こうに行ってくればいいんですね」


「ああ、しっかり努めを果たしてこいよ」


 こうして、リンちゃんを旅のお供に加えて、帰ることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ