第百四十八話
すこし間が空いてしまいました。
「お前、そんなに軽く言っていい内容じゃねぇじゃねぇかよ。いや、言えって言ったのは俺様だけどよ」
そんなに驚いたのか、魔王は俺の能力を聞いて慌てていた。
「そうは言っても、任意で使えるわけでもないですからね。有ってないような能力ですよ」
「そりゃあ、使ってるお前からすればそんな感想しか出ないんだろーがよー、傍から見りゃ時間を操ってるってこったろ? よくそんなに軽々しく言えるな」
「そこまで言うんでしたら、逆に魔王様に質問してもいいですか?」
俺がそんなに言うのならと、魔王に逆にそんなことを言うと、魔王は一瞬キョトン、とした後、大きな声で笑いだした。
「はっはっは! そうきたか。やっぱりお前も普通の奴とは一味違うな。言ってみろ。何でも答えてやる」
「さっき、僕の事を勇者、と言っていましたが、それはどうしてですか。僕は、勇者と名乗ったことはありませんし、誰かにそう呼ばれたこともありません。なのに、どうして勇者、なのですか?」
俺としては、甚だ不本意な呼ばれ方だ。誰が、好き好んで勇者と呼ばれたがるのか、いるなら見てみたいほどである。魔王はそれを聞いて、拍子抜けをしたような表情になった。
「そんなことでいいのか? 俺様はてっきり、弱点とか必殺技とかを効かれるもんだと思ってたぜ。まあいいか。それはだな、俺様に勇者の出現を告げていった奴がいるからだ。なんだか知らんが、勇者が将来、俺様をぶっ殺すって言ってな」
今になっちゃ、笑い話だな、なんて言って笑う魔王だが、俺は一つの記憶を思い出していた。ソルティアが言っていた予言だ。角の生えた人と戦う、と言っていた。魔族は、人間とは違い、角が生えた種族だ。そう考えると、辻褄は合っている。
「それを教えたのは、どんな人だったんですか?」
「んー、どんなやつだったかなぁ。俺様も覚えてねーなー。ただ、得体の知れないやつだってことくらいしか分からねーや」
「せめて、人間か魔族かくらいは分かりませんか?」
「それがなー、全く覚えてねぇ。何でも答えてやるって言った手前、答えられりゃあいいんだが」
「分からないんじゃあ仕方ありませんよ。ありがとうございます」
魔王は頭をがしがしと掻きながらそう言ってくれているが、忘れてしまったものは仕方がない。それよりも、以前に聞いた予言により現実味が出てきた事が問題だ。せめて、その相手が魔王でないことを祈るくらいしか、今は出来ないだろう。