第百二十八話
リドアール帝国に入った後は、再び空を派手に飛んでいった。初夏は、俺よりも速いので、追い付いていくのに必死である。というか、初夏の飛行には、魔粒子が動いている様子が見えないので、どう飛んでいるのかよく分からないのだが、それを聞くのを忘れていた。どうせなので、聞いてみることにする。
「ねえ、初夏。僕なんかは魔法で飛んでるから、魔法に必要なものが働いてるのが分かるんだけど、初夏からはなんでかそれが感じられないんだよね。初夏って、魔法で飛んでるんじゃないの?」
「ああ、そう言えば、前にもそんなことを聞かれたことがあった。俺は、魔法では飛んでいない。魔法と似たような現象を起こすことは出来るが、魔法とは別の理屈で飛んでいるんだ。なんていったって、前の世界でも使えたしな」
「なんだって!」
俺は、初夏が言ったことに天地がひっくり返ったかのような衝撃を受けた。前の世界でも使えるということは、魔粒子を利用しないで飛んでいるということだ。なんの代償も無しに、空を飛ぶなんてことが可能なのか。
「それって、僕がまだ向こうで生きていた頃から使えたの? というか、どうやって飛んでいるの?」
「そうだな、使えるようになったのは、お前が死んだ後からだな。飛んでいる原理は、俺もよく分かっていない。なんとなく、イメージするままに、としかいいようがないな」
俺はまず、初夏が使えるようになったのが俺が死んだ後ということに、僅かに安堵した。俺が死ぬ前から使えていたとしたら、初夏が俺にそんなに大きなことを隠していたということになるので、信頼されていなかったのではないかという不安は無くなった。
しかし、どうやって、という部分は全く分かっていない。というか、イメージってなんだよと言う話だ。俺がやっている、風を起こして体を動かし、体が風圧で壊れないよう強化し、凍えないよう周囲に程よい熱を起こすという作業は、無駄だと言うのか。
「別に、お前だって飛べているんだから、問題ないだろう」
「そんなに簡単に言わないでよ! 僕なんか、色々と平行して魔法を使ってて、大変なんだから。イメージだけで飛んでるのと一緒にしないでよ!」
「ふーん。そうなのか……。あ、次の場所が見えた。行くぞ」
「あ、誤魔化した! 逃がさないからね!」
ひゅーっと逃げるように飛んでいってしまった初夏を、すかさず追いかける。降下には、さらに摩擦で熱すぎにならないよう、摩擦力を減らしているのだが、初夏には必要ないんだろうな、なんて考えながら初夏を追いかけた。




