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第百二十四話

 飛び始めて五時間ほどして、メシア王国とリドアール帝国の間にある山脈の麓に、俺と初夏はやって来ていた。そこには、結構大きめの、遺跡のように見える洞窟が広がっていた。


「ここは、向こう側と繋がっている。その間でやることがあるから、それをやる間、危険がないようにしてくれ」


 初夏は、それだけを言って、勝手にどんどんと洞窟の中に入っていってしまう。慌てて、それを追いかける。


「だから、そんなに身勝手に進んでいかないでよ!」


「何でだ? 別に疲れたわけじゃないだろ?」


「そうだけど……分かったよ。もういいよ。どこにでも、付いていけばいいんでしょ」


 もう、諦めるしかないのだろう。振り回されるのは、仕方ない。どうにかしようとしても、疲れるだけだ。


 諦めて、無言で歩き続けて数十分すると、部屋のように開けている空間に辿り着いた。その部屋には、とても大きな扉のようなものが壁に張り付いていた。不思議なことに、その扉のようなものには、七色の魔粒子が纏わりついていた。


「ここはまだ、綻んでいないみたいだな。だけど、歪みが少し見える。やっておいた方がいいか……」


 初夏は、扉を調べながら、ぶつぶつと何事かを呟いている。しかし、おかしな扉だ。どのように調べても、扉の先に空間はない。そのはずが、扉の先からは、どこかからの光が漏れて出てきているのだ。


「ここには多分何も出ないが、取り敢えず周囲を警戒しておけ。万が一があるからな」


「分かったよ。ちゃんと警戒しておくから作業に集中して」


 最早、反抗はせず、大人しく警戒をする。周囲には、小さくて、弱そうな、ただの動物しかいない。数日前に戦った、猿のような強そうなやつは、いそうもない。


 俺が警戒をしている間、扉を弄っていた初夏のところからは、キィンという、例えるなら機械が、高速に動き始めた時のような音がしていた。そして、徐々に纏わりつくだけだった魔粒子が、秩序ある流れへと整えられて、水が流れるように滑らかなものへと変えられていった。


「終わった。次に行くぞ」


 そのまま、整えられていくそれに見入っていたら、初夏が立ち上がった。


「もういいの?」


「ここばかりに拘っても意味がないからな」


 初夏は、言ってすぐに動き出す。もう少し時間に余裕は持てないのだろうか。言っても意味がないので、言わないが。


 最後に、ちらりと扉を見た。その扉に纏わりついていた魔粒子は、完全に整えられて、水が上から下に流れるように、自然で、美しいものになっていた。

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