表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/153

第百二十二話

 初夏が目覚めた翌日、初夏の話を聞くために、城に集まれる貴族の諸侯を集めて、大会議が行われた。大部分が、最初に話していたことと同じだったが、幾つか違う点もあった。


 昨日とは違って、大勢の人に囲まれて話していた初夏は、居心地が悪そうだったが、それに耐えながら幾つか、事前にやるべき事を話した。


 まず、各地に十分に兵を配置すること。それを聞いて最初、戦争をしようと言うわけでもないのに、と思ったのだが、どうにも戦争になってしまう可能性があるらしい。


 それが、初夏が思っていたほど封印をしてからの時間が経っていなかったらしく、魔族の中には戦争を経験している世代が生き残っていると言うのだ。魔族の寿命は、五百を優に越えていくらしく、長生きしている魔族だと、千年を生きる人もいるそうなのだ。そして、戦争があったのが八百年前くらいなので、それなりの人数が戦争を知っている可能性があるとのこと。


 そういう理由で、兵を配置しておいて欲しいらしい。確かに、戦争を覚えている人がいるということは、人間がいるということを覚えていると言うことでもある。魔族よりも弱い人間の支配領域を奪うために来ても、ありえないとは言えない。それに、前に捕まえた魔族も、偵察と言っていたし、備える必要性はあるだろう。


 次に、国民に、魔族という存在について、周知をしておいて欲しいと言うこと。融和をするためには、相手の事を良く知っていなければならないし、当然の事だろう。


 その他にも、細細としたこともあったが、だいたいの内容はこの二つだ。しかし、貴族の大半が、その唐突の要求、というより命令に、反感を示した。当然だ。突然集められて、突拍子も無いことを言われて、さらに派兵とよく知りもしない存在を周知させろと言うのだ。すんなりと進むわけがない。


 このままだと、会議が泥沼の意義がない話し合いになりかねないと言うところで動いたのは、国王陛下だった。貴族の諸侯を一喝して、有無を言わせず、初夏の言ったことを全て行うようにと御下命を下した。この国の国王陛下は、やはり凄い人だ。よっぽどの人望がないと、自分の欲望に忠実そうな貴族たちを一言で従わせられないと思う。少なくとも、俺には出来ない。


 こうして、初夏の説明は終わった。これで、今日やることは終わりだと思っていたら、会議には続きがあった。


 なんと、俺が捕まえた魔族が連れてこられたのだ。しかも、恍惚とした、危ない表情をしていた。明らかに、クスリか魔法の力でおかしくなっていた。


 そのままそこで、魔族への質疑応答が始まった。そこで、初夏の話にも裏付けが取れて、貴族たちはにわかに活気づいた。魔族が攻めてこようとしている、という情報まであったので、まさに大慌てである。貴族はそれぞれが、話し合いをして今後の予定を組始めていた。しかし、俺には関係無かったので、手持ち無沙汰になったところで、初夏に呼び出された。何故か、嫌な予感がしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ