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第百十六話

 黒い箱の中から出て来た男、初夏は、キョロキョロと二、三度周りを見て、そして俺の方を見た。そして、難しそうな顔になる。


「俺の事を知っているらしいが、誰だ?」


 そうだった。初夏は何故か元の姿のままだったのだが、俺は体が変わっていたのだ。分からなくても無理はない。というよりも、分からないのが普通だ。


「それは後で話すよ。それよりも、どうしてこんなところにいるの? というよりも、なんでこっちの世界にいるの?」


「そんなことは後でも話せる。それよりも、もう少しいい場所に行かないか? ここはとても埃っぽい」


 俺が尋ねたことに答えずに、初夏は箱の中から出てくる。確かに、長話をするにはこの場所は悪いだろう。


「カーディル君! どういうことですか? あの人を知ってるんですか?」


 あ。初夏がいたという衝撃で、パティルがいたことを忘れていた。すぐさま、パティルに向き直る。


「えっと、色々とあって、知ってる、というより知ってたんだけど、彼は五月雨(さみだれ)初夏(はつか)。とりあえず、長話をここでするのはまずいから、別の場所に行こう」


「あ、そうですね。ここで話すというのは良くないですね。早く上に行きましょうか」


 パティルも、自分の疑問は置いておいて、この部屋から出て別の場所に行くことは賛成のようだ。


 部屋の外には、当然だが団長がいる。出て来た三人、特に初夏を見て、興味深そうな顔をしている。


「あなたが、彼の英雄、サミダレハツカなのですか。私が思っていたよりも、線が細いですね」


 団長が、想定外の事を言った。英雄? それってあの、世界を封印したという?


 初夏は、あまり居心地が良くないのか、複雑そうな顔で頭をかいている。


「まあ、そうなるのか。別に、そういう柄ではないんだがな。一応、それだ。お前が誰だかは知らないが、ここにまで来られると言うことはメシア王国ではそれなりの地位にいるんだろ? 多分だが、色々と働いてもらうことになる。俺が再び起こされたということは結界が解け始めているはずだ」


 どういうことだか分からないが、本当に初夏は英雄らしい。なぜ同年代だった初夏がそんな大昔にいたのかは分からないが、何があったのだろうか。


「待ってください! 英雄ってどういうことなのですか? え? え?」


 パティルは、まだ状況が飲み込めていないらしい。目線が団長と初夏の二人を間を行き来する。初夏は、そんなパティルのことを、じっと見た。


「スフィアの子孫か。やっぱり王族は橙色だな。まあ、知りたいことはこれからたっぷりと聞かせてやるから、待ってろ」


 初夏はそう言って、まるで自分の庭のように城を先導する。俺とパティルは、困惑しながらそれに着いて行った。

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