表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/153

第百十話

 魔族を右手にぶら下げながら数時間して日が暮れてきた頃、数日ぶりに自分の街に帰って来た。普段は何でもなく通っている道も、何日も見ないとそれが特別なもののように見えてくるから不思議だ。


 それはさておき、俺はまず、城へと向かうことにした。本当は一直線に家に帰りたいのだが、先に報告をしておかないといけない。それに、途中で拾った魔族も、その辺りに放置しておくわけにもいかない。


 城に入ると、皆が俺が掴んでいる魔族を見て、ぎょっとした顔をしていた。中には、顔見知りが数人声をかけてきたが、それらには全て、任務だからという言葉でおしきった。


 そうこうしているしながら歩いて、団長の部屋についた。軽くノックをして返事を待つ。すぐに、入れ、という声が中から聞こえてきたので、中に入る。


 中には当然ながら、団長が自分の椅子に座っていた。その前に直立する。


「カーディル・ナディア、任務を遂行して、ネルギア連合国から帰還しました」


「……それはいいが、その右手にあるものはなんだ? 見たところ、人間のようだが」


 さすがに、団長でも捕まれて気絶している魔族を放っておくことは出来なかったようだ。


「これは、おそらく魔族だと思われます。帰還途中で遭遇して、攻撃してきたので、何か役に立てばと思い持ってきました」


「そうか。後でそいつは牢屋に連れていこう。まさか、魔族を持ってくるとは思っていなくてな、それほど事態が進んでいるということだろう。それはともかく、頼んだものは持ってきてくれたのか?」


 言われて、俺は荷物の中からあの水晶を取り出して、団長に渡した。


「多分、これだと思います。猿型の動物から取り出したものです。それで、あの生物は一体何だったのですか? 明らかに、危険性が増していました」


「あれは、魔獣というものだ。魔力によって、在り方を変質させられた獣、ということらしい。数千年前に滅ぼされて、いなくなったものと思われていたが、やはり現れたか」


 この世界もそれなりに把握していると思っていたが、まだまだだったようだ。魔獣などというものは聞いたことがない。しかし、それは滅ぼされたという。だとしたら、なぜいたのだろうか。


「やはり、ということは、それが滅びていなかったと分かっていたのですか?」


「ああ。殆どの者には知らされていないが、国王と、ごく僅かな側近だけが知っていることだ。だが、お前には教えておいた方が良いだろう。しかし、他言無用だ。例え王女であっても、話すことは許さん」


 パティルにすらも、教えてはいけないということに、背筋が伸びるような気分になった。それだけ、極秘の情報ということだ。


「分かりました。絶対に他言しないと誓います」


「良いだろう。長話になる。カーディルもそこに座れ」


 促されるままに、椅子に座る。どんな話をされるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ