第百六話
残った猿を始末すると、近くの茂みに隠れていた三人が出てきた。オリビアちゃんは、自分が何をしたのか良く分かっているのか、神妙な顔をしている。
「オリビアちゃん、何が悪かったかは、分かる?」
俺が聞くと、うん、と頷いた。
「お姉ちゃんを、危ない目にあわせちゃった……」
「それは違うよ、オリビアちゃん。確かに、それも悪かったけど、本当に悪かったのは別の事だよ」
俺が首を降りながら言うと、驚いたような顔をした。
「じゃあ、何が悪かったの?」
「それは、ちゃんと約束を守れなかったことだよ。隠れてるって約束したでしょ?」
そう言うと、オリビアちゃんは、はっと気が付いたようだった。
「そっか……。ごめんなさい」
「はい。次はちゃんと約束は守んないとダメだよ」
オリビアちゃんが謝ったのを見て、エリシアさんの方を見ると、うんうんと頷いてくれた。どうやら、間違ったことは言わなくて済んだようだ。
「私も、ありがとうね。ホントにあのときは死んじゃうかと思ったわ」
「そんなことはないよ。あんな風に妹を庇った勇敢なお姉ちゃんは、ちゃんと妹と一緒にいられないと報われないでしょ?」
「何よその言い種。でも、ホントにありがと」
エリシアさんはそう言って、ふわりと微笑んだ。
「そんなことより、帰りましょうよ! ここにいると、また猿が出てきそうで少し怖いですし」
何故か、ソルティアさんが顔を真っ赤にして、そう言い出した。あまり、怖がっているようには見えない。
「何言ってるのよソル。どうせここまで来たんだから、夕陽でも見ていきましょう。カーディル君、ここから見られる夕陽は最高なのよ」
「そうなの? それは是非とも見ていきたいね」
確かに、今いるここは島の頂上なので、きっと素晴らしい景色を眺めることが出来るだろう。
「二人がそう言うなら、良いですけど」
ソルティアさんも、それには折れて、渋々と言った感じで賛成した。
そのまま、他愛ない会話をしながら、日が暮れるまで待った。もう全ての猿を殲滅出来ていたのか、猿は出てこなかった。
そして、その瞬間がやってきた。彼方の水平線に、太陽が沈んでいく。空に放射状に朱色の光が散った。海面にもそれが反射して、太陽から円形に光が放射しているように見える。
「やっぱりこの景色は良いわねぇ」
エリシアさんから、そんな感嘆の言葉が溢れた。俺も、陳腐だが、綺麗だと、そんな感想が出た。