彼らはここから物語を紡ぐ
気がつけば俺達はそこにいた。
あたり一面に黄金色のススキが広がり世界を金色に染め上げ、さらに夕日の輝きがよりいっそう色を強め、目を覆いたくなるほどの眩さをもたらす。時折、風が頬をなでるように通り過ぎていき、ススキが波を描くように揺らしてゆく。
およそ都会に住む者ではでは見られないであろう、目を惹きつけて一瞬まばたきするのも忘れてしまうほどに力強く、どこか懐かしい幻想的なこの光景を目にして、俺は体を動かすことができなかった。声を発するどころか指一本動かすだけで、この見事な一枚の絵画のような風景を壊してしまうのではないか。そう思うと、体を動かす気がなくなり、呼吸さえ控えめになってしまう。顔を向けた訳ではないが、どうやら他の奴らもこの風景に息をのんでいることが気配で分かった。俺はそのまま細目のままどこか心が満たされる気持ちでこの美しい風景を目に焼き付けていた。
そうしてどのぐらい経ったのだろう。一時間かもしれないしほんの10分だったのかもしれない。唐突に後ろから夕日とは異なる真っ白な光が俺らに降り注ぎ、俺達は驚いて目を手で覆いながら後ろを振り返った。




