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18マス目・香水使ってとにかく進む

 手を挙げて、頭の後ろで組め、膝をついて。そう言って銃を突きつけた時、ミチルはハムスターに餌をやっていた。

「困ったな」

 別に困っているふうもない。

「今ボクとこの子と(着替えてさっぱりしたシヴァを指す。自分の連れのような扱いだ)、あとヤナギダさんしかいないけど、ヤナギダさんお風呂に入ってるし」

「別に撃ちたいわけではない」

 なるべく声を低く抑え、ボビーは一歩中に入る。

「その彼を渡してくれればね」

「お兄さん、香水きついね」

 ミチルは膝をついたまま言った。

「こういう趣味だから」

 実際、装備をしながら思いついて香水を一瓶まるまるかぶってきたのだった。もしかしたら、かすかな匂いだけでボビーとシヴァの所属が同じだとミチルに気づかれてしまうかも知れない。だったら鼻を眩ますために逆に強い匂いが利用できるだろう。しかし、早く逃げないと今度はこの匂いで追い詰められてしまうに違いない。

 ちょうど風呂から上がったヤナギダがドアからのぞく。

「あの、パンツは……」すぐ近くに銃を持った男がいるのを認め、ひえっと叫んでまたバスルームに引っこんだ。鍵までかけている。

「言っておくが、二時間は仲間が見張っているからな、追わないように」

「臭いから追いかけたくない、撃たれたくもないし」

 面倒くさそうにミチルが言う。

「彼を連れていってもいいよ、仲間なの?」

「いや」

 ミチルの目の前で、あえてシヴァを乱暴に掴み、腕をねじあげる。シヴァが顔をしかめた。

「先に聞きたいことがあってね……コイツには」

「あまり痛くしないでやってね」ミチルは優しいことを言ってくれた。

「殺すなら、苦しまないようにしてやってくれない?」

「考えておく」

 ボビー、あくまでも非情な態度を崩さないよう、シヴァを吊り上げるように部屋から出ていった。


 非常階段を駆け下りながら、シヴァが言う。

「痛くしないでよ、ミチルくんにも言われたでしょう?」

「もう」ようやく逃げ出せることに安堵して、ボビーもつい顔がほころぶ。

「それに香水がきつ過ぎ」

 車に乗ってもシヴァはブツブツ言っていた。

「窓開けていいでしょ? 酔っちゃうよ」

 ボビーはふん、と鼻をならし車の屋根を巻き上げた。


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