17マス目・眠ったら一回休み
サンライズはようやく、モニタの前に座るカイトに目をやった。
「どうだ?」
カイトはちらっとふり向いただけで、また機器に集中している。
目の配り方までシヴァに似ている。
「どうもこうもねえよ」
それでも仕事としてはかなり気に入ったようだ。
このまままっとうになってくれれば、MIROCでも雇えるのに。
前回は取り逃がす前に、もっと感情的なものに訴えれば良かったのかもしれない。警察との打合せで、現在進行形の犯罪をとりあえず止めるほうに重点がおかれ、彼のような人間とは取引ばかりが先走ってしまい、犯罪そのものについて更生させるヒマがなかった。
あのまま逃げなければ、サンライズが彼の『更生』に一役買うはずだったのだ。もしかしたら、力を遣ってでも。
今回は、そこまでできるのだろうか? 時間はあるだろうか?
「シヴァ達が逃げたら教えてくれ、オレたちもキリのいい所でモニタを終了して、ここも撤収だ」
「あっちの2つの部屋はどうする?」
カイトが壁越しに指さした。
「とにかく逃げるが勝ちだな。あっちの部屋に残ってる受信機の回収とかも後だ。ここの部屋には機器のほかは何も残したりしてないよな?」
「便所も使ってねえよ」
「ならいい」
そこまで言うと、急に張り詰めていたものが緩んだ。いかん、眠るな。
814を激しくノックする音が聴こえて来た。廊下ごしなのかモニタ通しなのかがはっきりしない。
「おい、開けろ」社長が怒鳴っている。
「ナカソネ、いるんだろう?」
814の中からは物音一つしない。サンライズ、どうにかヤツを眠らせることには成功した。
力を遣って、だと思う。サンライズは朦朧とした頭の中で思い返す。確かにシェイクした、ようなしないような。いや、したぞ。出来ていたと思う。あ、それともぶん殴っちまったかな? 忘れた。
殴って寝かせると、後でノギからこっぴどく叱られる。実際、どうしたんだっけ?
まあいい、とにかく寝ていてくれれば。
数秒後に、自分も深い眠りの中に引きずり込まれていた。




