16マス目・他のコマに遭ったら前にダッシュ
ボビーは、シヴァがシャワー室に入れられると同時に、髪を後ろに一つでくくり、装備をあらためた。
カイトはまだ1021のモニタに集中している。
リーダーの指示はないが、シヴァが尋問される前に救い出した方がいいかも知れない、と判断、ダミーの銃も取り上げ、ホルスターにセットする。
今日は男物のスーツなのでこんな銃もあまり違和感がない。それでも何となく、居心地の悪さはあった。
鏡に向き合ってざっとチェックしている時、ノックが聞こえた。三回、間をおいて二回、そしてまた三回。リーダーだ。
覗き穴から確認して、急いでドアを開ける。
サンライズは中に入る時かなりよろけていた。それでも自力で歩けたのだ。
「ベッド貸して」
吐きそうな声。両手で頭を押さえている。また、あれを遣ったのかしら?
彼をベッドまで導き、掛け布団の上からそのまま横たわらせた。
「ダメだ、カゼなのか頭痛なのか歳のせいなのか分からない」まだ少し熱が高いようだ。
「ボビー」それでもどうにか頭だけ起こした。
「頼む、シヴァを連れ帰ってくれ。ヤツらの部屋に連れて行かれた」
「モニタで聞いた。鼻の利く小僧さんがいて、インフルエンザ患者と一緒にいた、ってバレたみたい。今、連れの男とシャワー浴びるよう言われて先にシヴァが入ってる」
「連れのヤナギダは」
「社長に絞られてるわ。その後シャワーでしょう。着ていた服は捨てるように、って」
モニタから、社長の声がした。
「……ナカソネに先に話を聞く。ちょっと行ってくるからミチル、あの若いのを見張っていてくれ。ヤナギダがひと風呂浴びるまでだから、あまり長い時間じゃない、いいだろう?」
「ヤナギダさんもちゃんとシャワー浴びてよね」
「サタケを呼んでこようか? オマエだけじゃあ心配だな」
社長が秘書の部屋に内線電話をかけようとしたら、ミチルが止めた。
「もういいよ、服持ってきたり見張りに来たり、サタケのおじいちゃん腰が痛いって言うし。ボク一人でいられるよ。あ、出てきた」
シヴァが風呂から出てきたらしく、ミチルがかいがいしく服を世話してやっている物音がしていた。
「はい次ヤナギダさん、」
ミチルに指示されて、ヤナギダもバスルームに入ったようだった。
「今だ」そのまま外に出て、ここには戻るな、そう指示されてボビーは飛び出した。




