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第二部 第二章 『第八の乗客は、神(ラスボス)より重い』

 修学旅行。

 それは学生生活における最大のイベントであり、友情と恋愛、そして枕投げという名の戦争が勃発する戦場。


 だが、俺たち『1年Sクラス』にとってのそれは、文字通りの『世界大戦』を意味していた。


「これより、修学旅行の班決めを行う!」


 担任(筋肉)が黒板に大きく『8』と書いた。


「今回の旅先は『世界一周弾丸ツアー(5泊6日)』だ! 移動は魔法転移、宿泊は各国の一ツ星から五ツ星ホテル! 危険地帯も含まれるため、班員は8名編成とする! 余った奴は、先生とマンツーマンで『無人島サバイバル』だ!」


 8人班。

 通常なら揉める人数だが、俺の周りにはすでに『運命(呪い)』で結ばれた面々が待機していた。


 1.桜川ハル(俺・一般人)

 2.皇ヒヅキ(幼馴染・ヤンデレ水属性)

 3.夏目ヒマワリ(脳筋・太陽属性)

 4.江戸川アオイ(睡眠・重力属性)

 5.月乃下ミサキ(ダウナー・毒属性)

 6.彼岸サヤカ(中二病・呪い属性)

 7.雪音シズク(ポンコツ・謎属性)

 計7名。


 俺の席を中心に、彼女たちが円陣を組んでいる。

 周囲のクラスメイトたちは、「あそこに関わったら死ぬ」「災害指定区域だ」「俺たちは平和な班を作ろう」と、モーゼの十戒のように距離を取っていた。


「……ハルお兄ちゃん。あと一人よ」


 ヒヅキが不満げに言う。


「誰を入れる? 私の愛の巣(班)に異分子は入れたくないのだけれど」


「……誰でもいい。荷物持ちができる頑丈な奴を」


 ヒマワリがクラスの男子を見渡す。男子たちが「ひっ!」と悲鳴を上げて目を逸らす。


「……静かな子がいい。私の睡眠を妨げない子」


 アオイが枕を抱えて要望を出す。


「……毒見役が必要ね」


 ミサキが危ないことを言う。


「フフフ……我が『第八の眷属』か。選ばれし生贄はどこだ……」


 サヤカが鎌のようなものを構える。


「……ククク。私の『謎』に耐えられる人材かしら……」


 シズクがドライアイスの煙幕を焚く。


(……誰も来ないだろ、これ)


 俺は頭を抱えた。

 この『七人の侍』ならぬ『七人の厄災』に飛び込んでくる勇者は、この学園には存在しない。侍なら村を守ってくれるが、こいつらは行く先々の村を焼き払う側だ。

 クラスメイトたちはすでに班を組み終え、憐れみの視線を送ってきている。

 このままでは、俺たちは定員割れで『先生と行く無人島サバイバル』行きだ。それだけは避けたい。


「おい、誰かいないかー! 命知らずで、空気の読めない奴!」


 俺が虚しく叫んだ、その時だった。

 ガラララッ!!

 教室のドアが勢いよく開いた。


「はーい! 遅刻しましたー! 転入生でーす!」


 そこに立っていたのは、見覚えがありすぎるピンク髪の美少女だった。

 セーラー服を完璧に着こなし、背中には「愛」と書かれたリュックサック。手には「旅のしおり(自作)」を持っている。


「初めまして! 今日からこのクラスに入った、桜川モモネ(16歳・自称)です☆ 班に入れてくださーい!」


「「「……誰?」」」


 ヒヅキたちが首を傾げる中、担任(筋肉)が重々しく口を開いた。


「……理事会からのトップダウンだ。俺の筋肉でも止められなかった。文句は上に言え」


 俺だけが絶句していた。


(……母さん!? 何やってんだあんた!)


『ハルくん、サプライズです! ママも修学旅行に行きたくて、理事長権限で女子高生に若返りました(戸籍偽造)! テヘペロ☆』


(テヘペロじゃねえよ! 帰れ!)


 モモネ(母)は、スキップで俺たちの輪に入ってきた。


「あらあら、イケメンと美少女ばかりの素敵な班ですね! 私、混ぜてくれませんか? 特技は『煽りスキル』と『フラグ建築』です!」


「……怪しい」


 シズクがスッと虫眼鏡を向けた。


「転校生設定……私と被ってるわ。しかも、その妙なハイテンション。それに、この得体の知れないプレッシャー……まるで『神』のような、途方もない『重さ』を感じるわ……!」


(……シズク、お前のポンコツ推理、たまに核心(真実)を突くから心臓に悪い)


 俺は内心で冷や汗を流した。アオイの物理的な重力や、ヒヅキの愛情の重さなんか目じゃない。こいつは文字通り、創造神ラスボスとしての『重さ』を持った第八の乗客なのだ。


「……この女、できる」


 アオイが目を開いた。


「私の『重力結界』を、笑顔ですり抜けてきた……」


「まあまあ! 仲良くしましょうよ! ほら、ハルくんも!」


 母さんは俺の腕に抱きついた。

 瞬間――。


 ヒヅキの足元から殺意の水柱が立ち上がり、ヒマワリの髪が怒りで発火し、アオイの周囲の重力が歪み、ミサキの毒瓶が沸騰し、サヤカの背後に呪いのオーラが浮かび、シズクのドライアイス(通販)が最大出力で噴射された。


「「「「「「……離れなさい(離れろ/消えろ/呪う)」」」」」」


「お前らストップ! 教室が消滅する!」


 担任が筋肉で結界を張りながら絶叫した。


 周囲の視線が突き刺さる。

 「なんだあの美少女?」「桜川の親戚か?」「いや、雰囲気が似すぎている……」


「……仕方ない。入れるか」


 俺はため息をついて諦めた。ここで断れば、母さんは間違いなく「裏工作」で俺たちの旅程を最初から地獄に変えるだろう。目の届く監視下に置く方がマシだ。


「やったー! じゃあ決定ですね! 班の名前は『チーム・カオス』でどうですか?」


「却下だ。班長は俺がやる」


 こうして、8人目のメンバーが決まった。

 まさかの『創造神ママ』降臨。俺の修学旅行は、始まる前から『神話級クエスト』へと変貌していた。


「それじゃあ『チーム・カオス』、世界一周へ出発進行〜!」


「だからその班名は却下だって言ってるだろ!」


 これが、女神のやることか。

 自分の息子を追い詰めるために、わざわざ女子高生コスプレで参戦するとは。


 俺たちの『世界一周・弾丸デスツアー』が、今、幕を開ける。

お読みいただきありがとうございます!

「母さんのJK制服、案外イケる」「ハル、まんざらでもなさそう」と思っていただけたら、

ブックマークや評価(★)をズドン!と押していただけると、チーム・カオスの「旅の資金」が潤い、女神(作者)が豪遊できます!

さて、最強の第八の乗客ラスボスを迎え、いよいよ出発する「修学旅行(世界一周)」!

しかし、このメンバーで行く海外旅行が、平和な名所巡りで終わるはずがありません。

開幕、「国際指名手配・逃亡編」です!


【次回予告】

『あらあら、ハルくん。ママと一緒の修学旅行、ワクワクして眠れませんか?

 最初の目的地は、中世の街並みが美しい「騎士の国」!

 

 しかし、到着5分でハルの財布(全員の旅費)がスリに盗まれた!?

 

 「私のハルとの思い出(資金)を……万死!」

 「待て! 街中で戦略級魔法を撃つなあああ!!」

 

 スリ一匹を捕まえるために、蒸発する城壁! 溶ける石畳!

 開始早々、国家反逆罪で追われる身となったチーム・カオスが逃げ込んだ先は……欲望渦巻く「魔法カジノ」!?

 

 次回、これが女神のやることか。

 『第二部第三章 はじめての国際指名手配ワールドツアーと、消えた騎士の国(更地)』

 

 さあハルくん。パスポートと一緒に「遺書」は持ちましたか? 賠償金でマグロ漁船に乗る前に、スロットで一攫千金よ!(ディーラーは私がやります☆)』

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