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本編第九章(第一部最終話) 『夏色ハレーション(核爆発)』

 夏休み。

 それは学生にとってのオアシスであり、思い出作りの聖域。

 海。水着。バーベキュー。花火。

 青春の「四大行事」をコンプリートすることこそが、リア充へのパスポートである。

 だが、俺のパスポートは、出国審査の時点ですでに燃えていた。


「ようこそ、桜川家のプライベートビーチ(無人島)へ! ここならどれだけ地形を変えても国際問題になりません!」


 母さん(女神)が拡声器で叫ぶ。

 目の前には、コバルトブルーの海。白い砂浜。

 そして、完全武装した5人の少女たち。


「……帰りたい」


 俺、桜川ハルは、常夏の太陽の下で震えていた。

 なぜなら、この島の周囲には『対・界滅級結界』が張られているからだ。

 つまり、ここはリゾートではない。隔離施設だ。


『ハルくん、第一部最終回です! 尺が足りないので、水着回と合宿回とお祭り回を全部同時にやります! 死なないでね!』


 ◇


 ミッション1:水着審査(防御力ゼロ)


「見て見てハルお兄ちゃん! 私の『ボンテージ・ビキニ』! この紐、全部『拘束魔法』でできているのよ!」


 ヒヅキがくねくねと迫ってくる。布面積が迷子だ。

 そして彼女が歩くたびに、海が割れてレッドカーペットを作っている。モーゼか。


「軟弱な! 水着とは、太陽を浴びるための受信機だ!」


 ヒマワリが、全身が鏡面加工されたシルバーのビキニで現れる。

 反射率100%。直視すると網膜が焼ける。


「私が太陽だ! 直視するな、崇めろ!」


「……眠い。浮き輪で寝る」


 アオイは、布団の柄がプリントされたワンピース水着。

 だが、彼女は泳がない。重力操作で海面から5センチ浮遊し、そのまま沖へと流されていく。


「……さらば」


「「……紫外線は敵」」


 ミサキとサヤカは、全身を黒いラッシュガードとローブで覆っていた。

 海に来た意味がない。ただの不審者だ。


「ハル、日焼け止め(猛毒)塗って」


「我が肌を焼くとは、太陽め、生意気な……」


 カオスだ。

 誰一人として「海を楽しむ」という本来の目的を達成していない。


 ◇


 ミッション2:スイカ割り(攻城戦)


「次はスイカ割りよ! 優勝者はハルお兄ちゃんに『あーん』してもらえる権利を獲得!」


 砂浜に置かれたのは、普通のスイカではない。

 直径2メートル。表面はミスリル合金並みの硬度を持ち、種をマシンガンのように発射する『機動要塞スイカ(軍事用)』だ。


「死ねぇぇぇ!」


 ヒヅキが水圧カッターで斬りかかる。

 キンッ! 弾かれた。


「硬い! 愛の力が足りないの!?」


「燃え尽きろ!」


 ヒマワリがフレア・ドライブ(体当たり)をかます。

 ジュッ! 表面が焦げただけ。


「中身が蒸発しないだと!?」


「……重力・圧壊プレス


 アオイが指を下ろす。

 メリメリ……と砂浜が陥没するが、スイカは耐えている。


「くっ、なんて強敵だ……! これが『夏』の魔物か!」


 サヤカが呪いの杭を打ち込むが、跳ね返される。

 全員の必殺技を受けても無傷のスイカ。

 種マシンガンが乱射され、俺たちは遮蔽物に隠れる。


「どうすんだこれ! 食う前に死ぬぞ!」


「ハルくん! あいつの弱点は『ヘタ』の部分よ!」


「そこか!」


 俺は飛び出す。

 風を纏い、弾幕を回避。

 俺の武器は剣でも魔法でもない。研ぎ澄まされた『手刀』だ。


「魔法・『春の剪定ガーデニング・チョップ』!!」


 スパンッ!

 綺麗にヘタが切り落とされると、スイカは「パッカーン」と効果音を立てて真っ二つに割れた。

 中身は、奇跡的に無事な真っ赤な果肉。


「……美味しい」


「ハルの手刀、切れ味良すぎない?」


 全員でスイカを食べる。

 戦場の後のレーション(補給食)の味がした。


 ◇


 ミッション3:バーベキュー(化学実験)

 夕暮れ時。

 空腹の猛獣たち(彼女ら)は、肉を求めていた。


「肉だ! 焼かせろ!」


 ヒマワリが火を吹く。火力が強すぎて、高級和牛が一瞬で炭化する。


「ああっ!? 私のA5ランクが!」


「洗わなきゃ! 殺菌よ!」


 ヒヅキが高圧洗浄機で肉を洗う。肉がミンチになって吹き飛ぶ。


「ああっ!? 私のハンバーグが!」


「……生でいい」


 ミサキとサヤカが、生肉に紫色のソース(毒)をかけて食べようとする。


「やめろ! 腹を壊す!」


「……焼くの面倒。摩擦熱で」


 アオイが肉を高速振動させる。

 ボッ! 肉が爆発した。


「お前ら! 飯を粗末にするな!」


 俺はトングを両手に持ち、鉄板の前に立つ。

 これまでの戦い(学園生活)で培ったスキルを全開放する。


「風魔法・『熱風循環コンベクション・オーブン』!」


「水魔法・『適度な加湿スチーム・グリル』!」


 俺の完璧な火加減管理により、肉は最高の焼き加減に。

 野菜はシャキシャキ、肉はジューシー。


「うまい!」


「ハル、お嫁に来て!」


「……毎日これ食べたい」


 胃袋は掴んだ。だが、食材が尽きた。

 俺の分がない。


 ◇


 ファイナル・ミッション:花火大会スター・ウォーズ


 夜。

 満天の星空の下。

 本来なら、業者による打ち上げ花火が予定されていた。

 だが、業者の船は、昼間の騒ぎ(スイカ割りによる流れ弾)で沈没していた。


「……花火、ないの?」


 アオイが残念そうに呟く。


「ハルお兄ちゃんと見るはずだったのに……」


 ヒヅキが涙ぐむ。

 沈む空気。

 最終回なのに、このままバッドエンドか?

 いや、そんなことはさせない。

 俺は立ち上がる。


「ないなら、作ればいいだろ」


 俺は全員を見渡す。

 水、炎、重力(星)、毒(色彩)、闇。

 ここには、世界を滅ぼせるだけのエネルギーがある。

 使いようによっては、世界で一番綺麗な花火になるはずだ。


「全員、空に向かって最大魔法を撃て!」


「えっ、でも島が消えるわよ!?」


「俺が制御する! 信じろ!」


 俺の言葉に、5人の少女たちが頷く。


「いくわよ! 『アクア・バースト』!」


「燃えろ! 『プロミネンス・カノン』!」


「落ちろ! 『メテオ・レイン』!」


「染まれ! 『ヴェノム・ミスト』!」


「穿て! 『ダーク・マター』!」


 五色の極大魔法が、夜空の一点に収束する。

 混ざり合い、臨界点を超え、白い光となって暴走しそうになる。


「今だ! 魔法・『春の夜のカレイド・スコープ』!!」


 俺は全魔力を叩きつける。

 『春』の調和の力で、暴走するエネルギーを包み込む。

 破壊の衝動を、創造の輝きへ。

 殺意を、感動へ!


 ドォォォォォォン……!


 夜空が割れた。

 そして、降り注いだのは――破壊の光ではなく、一億色の花火だった。

 水と炎が混ざり合ってオーロラを描き、重力と闇が星屑のように煌めき、毒の霧が虹色の雲となって広がる。

 それは、既存の花火など比較にならない、幻想的で、デタラメで、美しい光景。


「……わぁ」


「きれい……」


 少女たちが見上げる。

 その瞳に、俺たちが作った色が映っている。

 ヒヅキが、俺の手を握る。

 ヒマワリが、俺の背中を叩く。

 アオイが、俺の肩に寄りかかる。

 ミサキとサヤカが、静かに微笑む。


「……ハルくん。最高です」


「ああ……悪くないな」


 平々凡々な俺が、転生して、女神に弄ばれて。

 気づけば、世界の破壊者たちと笑い合っている。

 これが俺の、新しい人生か。


『カット! カーット! 素晴らしい! 最高の最終回でした!』


 母さんの声で、我に返る。

 空を見上げると、花火の煙文字で『第二期制作決定!』と書かれていた。


「……は?」

『というわけでハルくん、秋からは「修学旅行編(世界一周)」と「文化祭編(学園戦争)」が待っています! 休んでいる暇はありませんよ!』


「ふざけんな! 俺の夏休みを返せえええええ!!」


 俺の絶叫が、夜の海に吸い込まれていく。

 物語は終わらない。

 俺たちの戦い(青春)は、これからだ!


 第一部 完

お読みいただきありがとうございます!

「第一部完結おめでとう!」「夏休み(サバイバル)楽しそうだった」と思っていただけたら、

ブックマークや評価(★)をドカン!と打ち上げていただけると、第二部の制作予算(女神のやる気)が倍増します!

さて、季節は巡り、物語は「第二部」へ。

二学期。それは、文化祭、修学旅行、そしてクリスマスの季節。

しかし、平和なイベントなどあるはずがありません。

開幕、「新勢力襲来・学園崩壊編」です!


【次回予告】

『あらあら、ハルくん。夏休みの宿題サバイバルは終わりましたか?

 お待たせしました、第二部スタートです!

 

 二学期の幕開け! しかし、登校したハルを待っていたのは、バリケードで封鎖された校門と、焦げ臭い校舎!?

 

 「我こそは生徒会! この学園の秩序カオスを管理する者!」

 

 ついに動き出す、学園最強の権力機構「生徒会エンペラー」!

 新たな刺客、新たな理不尽! そしてハルの「平穏」は、校則違反として粛清される!?

 

 次回、これが女神のやることか。

 『第二部第一章 二学期セカンド・シーズンの洗礼と、生徒会ラスボスの帰還』

 

 さあハルくん。新章突入よ! オープニングも一新された「絶望」に、その身を捧げなさい!(新キャラの声優は豪華にしておいたわよ☆)』

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