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「――警告」


その声は、静かすぎて、

怒りとも恐怖とも違った。


「……何だ」


世界の縁。

俺が立つ場所に、観測者は現れていた。


フードの奥の目が、

いつもより――近い。


「あなたは、

 声を使いました」


「……ああ」


否定しない。


「彼女に、

 届いた」


一拍。


「……届いてしまいました」


観測者は、言い直す。


その違いが、

嫌な予感を連れてくる。


「……何が起きる」


「起きた、です」


空間に、

薄い“線”が浮かぶ。


それは、

世界の記録が使う――

索引。


「世界は、

 あなたの存在を“見失った”」


「……それは、計画通りだ」


「はい」


観測者は、淡々と続ける。


「ですが――

 他者の認識を介した干渉は、

 例外を生みます」


「……ミオが、

 俺を認識した」


「正確には」


観測者が、訂正する。


「彼女の“癒しの回路”が、

 あなたの位相に触れた」


「……癒しが、

 アンテナになった、か」


「理解が早い」


だが、

その次の言葉が、重い。


「代償は、

 索引の一部再生成」


線が、

微かに脈打つ。


「神の代理人は、

 まだ気づいていません」


「……だが」


「執行官級なら、

 違和感として拾えます」


胸の奥が、

静かに冷える。


「……リィナか」


「可能性は高い」


観測者は、

視線を外さない。


「あなたが、

 彼女に“会わない選択”を

 続けてきた理由――」


一拍。


「それが、崩れ始めています」


沈黙。


「……声を、

 使うなということか」


「今後は、

 極力」


「……極力、か」


「完全禁止ではありません」


その言葉が、

さらに重い。


「あなたは、

 人間性を完全に捨てていない」


「……それは、

 弱点だと?」


「強みであり、

 危険因子です」


観測者は、

少しだけ声を落とす。


「世界外存在が、

 他者と繋がり続けた例は――」


言葉を、

選ぶ。


「長く、保ちません」


「……末路は」


「索引が再構築され、

 発見される」


「……その時は」


「再び、

 修復対象です」


重い沈黙。


「……それでも」


俺は、

空を見る。


「……後悔はない」


「……でしょう」


観測者は、

僅かに頷いた。


「では、

 対策を提示します」


「……聞こう」


「声を、分散させてください」


「……分散?」


「一人に、

 深く届かせない」


説明は、簡潔だ。


「あなたの“存在波”を、

 複数の役割に分ける」


「……カナデ、

 リィナ、

 そして……」


「彼女」


観測者は、

はっきり言った。


「一人に集中しない関係性が、

 あなたを隠します」


「……皮肉だな」


「合理的です」


観測者は、

感情を挟まない。


「あなたが、

 誰か一人だけを選べば――」


「世界は、

 そこから掴みます」


「……分かった」


短く、答える。


「……ミオには」


「声は、

 もう十分に届きました」


観測者は、

そう言って、

距離を取る。


「次に届くのは、

 危険信号です」


「……覚えておく」


観測者は、

最後に一言だけ残した。


「優しさは、

 世界にとって――

 最大の手がかりです」


そして、

消えた。


世界の縁に、

静寂が戻る。


「……声が、

 傷になる、か」


それでも。


俺は、

胸の奥に残る――

あの返事を、

否定できなかった。


代償は、

受け取った。


だから次は――

選び方を、間違えない。


世界に見つからず、

それでも――

誰も、見捨てないために。


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