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七日。


それは、猶予というには短く、

覚悟を決めるには長すぎる時間だった。


焚き火を囲み、俺たちは座っていた。

誰も口を開かない。


最初に沈黙を破ったのは――ミオだった。


「……私」


小さく、けれどはっきりと。


「七日間、

 治しきることは、できません」


胸が、少しだけ締め付けられる。


「……でも」


彼女は顔を上げる。


「壊れる速度を、

 遅らせることはできます」


「……無理はするな」


「します」


即答だった。


「しないと……

 追いつけないから」


それは、弱音ではなく、

役割宣言だった。


「私は――

 “完全に治す人”じゃありません」


手を、胸に当てる。


「あなたが、

 今日を生き延びるための人になります」


癒しは、限界を知ったからこそ、

“現実的”になった。


次に口を開いたのは、

焚き火の向こうで足を組んでいた――カナデ。


「じゃあ、私」


楽しそうに笑う。


「七日間、

 一番危ない場所を嗅ぎ回る」


「……囮か」


「正解」


肩をすくめる。


「神の代理人、回収部隊、

 どっちも“匂い”が違う」


唇を舐める。


「先に見つけて、

 先にぶつかって――」


俺を見る。


「あなたに、選択肢を残す」


「……それは、

 自分が狙われるってことだ」


「うん」


悪びれもせず。


「でもさ」


一瞬、真面目な目になる。


「あなたが壊れる瞬間って、

 だいたい独りの時でしょ」


言い返せない。


「だから、

 一番前は私が取る」


煽る側は、

初めて“守るために煽る”役割を引き受けた。


「……次」


俺が言うと、

空気が、少し重くなる。


皆が分かっている。


リィナの席だ。


だが、その名は、

ここにはいない。


「……彼女は」


ミオが、言いづらそうに口を開く。


「……七日後……」


「来る」


俺が、答える。


「必ず」


その時。


焚き火の炎が、

一瞬だけ、逆流した。


音もなく、

一人の影が現れる。


フードを被った、細身の女。


「――議論は、概ね妥当」


冷たい声。


だが、

どこか――疲れている。


「……あなたは……」


ミオが、息を呑む。


「観測者」


フードの奥で、

微かに目が光る。


「あるいは――

 記録係」


彼女は、俺を見る。


「あなたは七日後、

 粛清される確率が――」


一拍。


「七八%」


重い数字。


「……下げられるか」


「可能」


即答だった。


「ただし――」


一歩、近づく。


「世界を、欺く必要がある」


「……方法は」


「あなたを、

 “死んだことにする”」


空気が、凍る。


「……擬装死か」


「正確には、

 観測上の死亡」


彼女は淡々と続ける。


「世界は、

 “確認できない存在”を追えない」


「……代償は」


「あなたの存在は、

 以後――」


一瞬、言葉を探す。


「世界の記録から、外れる」


戻れない。


それは、

リィナのいる“世界”からも。


ミオが、唇を噛む。


カナデが、楽しそうに笑う。


「最高じゃん」


「……お前は、

 軽すぎる」


「いいでしょ」


肩をすくめる。


「壊れるより、消える方がマシ」


観測者が、最後に言う。


「私は、

 七日目に“死”を記録する」


「それまで、

 あなたたちは――」


視線を巡らせる。


「彼を生かしなさい」


炎が、元に戻る。


彼女の姿は、

最初からいなかったかのように消えた。


沈黙。


七日間の“役割”は、

すべて決まった。


癒しは、今日を生かす。

煽りは、前に立つ。

観測は、世界を欺く。


そして――

止める者は、七日後に来る。


「……なあ」


俺は、焚き火を見る。


「それでも、

 いいのか」


ミオが、頷く。


「……選びました」


カナデが、笑う。


「今さらでしょ」


俺は、息を吐く。


七日間。


それは、

**全員が“自分の役割を背負う時間”**だ。


そして七日後――

止める女が剣を振るう時。


俺は、

この選択を、

後悔しないために立っている。


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