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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第七章 「ディストリビューション」

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Short Stories 1 「曜日の秘密?」

 セレスティア商会の二階の一室。


 窓際の机に座ったヒカリは、広げたアルカ語の教本に眉を寄せていた。


「……曜日、星の日、火の日、水の日、土の日、風の日、闇の日、光の日……」


 ヒカリは小声で読み上げて、首をかしげた。


「でも……雷は、ないんだ……」


 机に向かって帳簿を整理していたアイラが顔を上げる。


「どうかしましたか、ヒカリさん?」


「七大属性の中で、雷だけ曜日になってないんです。なんでなんですか?」


 アイラも少し考え込んでから答える。


「たしかに……雷属性は主要なひとつなのに。……不思議ですね」


 そのとき、扉が開き、フィリアが書類を抱えて入ってきた。耳に入った会話に、足を止める。


「……その話ですの?」


「フィリアさん、知ってますか?」


 フィリアはため息をつき、椅子に腰を下ろす。


「雷は昔から忌避される属性でしたの。空を裂き、大地を焼き、瞬時に命を奪うその力が、あまりに恐れられていたのですわ」


「へぇ……」


 ヒカリは目を丸くした。


「でも、闇の日はあるのに?」


 アイラは控えめに頷きながら、少し困ったように口を開いた。


「確かに、闇のほうが怖い気もしますけど……」


 その一言にフィリアは肩を落とした。


「ですわよね……。けれど、昔のお偉いさん方が決めたのです。雷曜日は怖いから、と。結局、暦から外されてしまったのですわ」


 そう言ったフィリアの声には、どこか寂しげな響きが混じっていた。


「……わたくし、得意魔法は雷属性なのですもの。こうして公に疎まれているのは、やはり少し、悲しいものですわ」


 ヒカリは慌てて首を振った。


「で、でも! フィリアさんの魔法、すっごく格好いいですよ! この前だって、雷の槍で魔獣を一撃で倒して……」


「ふふ、ありがとう」


 フィリアの口元が少しだけ和らぐ。


 アイラは苦笑して肩をすくめた。


「……それにしても、『怖いから』なんて理由で歴史が変わるなんて、すごいですね」


「まったくですわ」


 フィリアは、静かにため息をつく。


 だが次の瞬間、ヒカリが笑顔で声を上げる。


「じゃあ、今日からは勝手に“雷の日”って決めちゃいましょう!」


「……まあ、可愛らしい発想ですわね」


 フィリアは微笑み、アイラもつられて頷いた。


 セレスティア商会の午後は、少しだけ明るい笑いに包まれた。

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