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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第六章 「アキュムレーション」

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第48話 「過去との邂逅」

 昼下がり。


 俺たちは、ゴンドラに乗って北運河を渡り、初心者ダンジョン――『薄明の洞窟』と呼ばれる場所に到着した。


 小さな丘陵に口を開けた洞窟は、昼の光が差し込むため内部も暗すぎることはない。入り口には簡素な石の門と管理用の小屋が並んでいるだけで、観光地の洞穴と変わらない印象だった。


「ここが……」


 俺は口を開く。


「思ったより迫力に欠けるな」


「初心者向けですから」


 エルヴィナが落ち着いた声で返す。


「五層までしかなく、魔獣も大したものは出ません。訓練には丁度よいでしょう」


 そのときだった。


 ダンジョンの入口付近に、既に先客のパーティが集まっているのが目に入った。


 鎧を雑に着込んだリーダーと思しき男、前衛らしき戦士、軽装の弓使い、赤毛の魔法士。どこか柄の悪い雰囲気をまとった一団だ。


「おや、見ない顔だな」


 リーダーと思われる男がこちらを値踏みするように睨みつける。


 俺は答えずにいたが、代わりにフィリアが上品に一歩前へ出た。


「通りすがりの新参者ですわ。ご心配なく」


「ふん、貴族のお嬢様か? こんなとこで何やってやがる」


 弓使いの女が鼻で笑った。


 そこへ、戦士風の男が俺たちの後ろを見て目を細める。


「……おいおい、嘘だろ。そいつ……あの時の魔法士じゃねえか」


 空気が一瞬にして凍りついた。


 アイラは肩を震わせ、顔を強ばらせる


「お前、生きてたのかよ」


 戦士が口の端を歪める。


「てっきり、あのとき魔獣に食われたもんだと思ってたぜ」


「…………」


 アイラの唇からは声が出なかった。


「ははっ、なるほどな。今度はこの連中に拾われたわけか。お前らも物好きだな」


 リーダーの男が嘲笑する。


「こいつは使えねえぞ? お前らも、捨て駒にして逃げるつもりなんだろ」


 頭に血が上る。


 思わず前に出かけたが、その瞬間フィリアが一歩進み出て、澄んだ声を響かせる。


「下卑た物言いは感心しませんわね」


 フィリアの紫の瞳が、すっと鋭さを帯びた。


「わたくしたちは仲間を捨てるような真似はいたしません。――行きましょう、皆さま」


 背後で笑い声が響いたが、振り返る気にはならなかった。


 ……

 

 …


 洞窟の手前まで来たとき、アイラがふらりと立ち止まった。


 俺たちも足を止める。


「……ごめんなさい」


 アイラが小さくつぶやいた。


「わたし……やっぱり怖いです。前に一度だけ、魔法士ギルドのお仕事であの人たち……宵の明星の人たちとダンジョンに入ったことがあって……」


 アイラの声は震えていた。


「強い魔獣に出会ったとき、皆、わたしを置いて逃げました。わたしだけが、囮にされて……」


 言葉が詰まり、喉が震える。


 フィリアがそっとアイラの手を取った。


「でも、生きて戻ってきたのですわ。勇気を持って脱出したのでしょう? あなたは弱くなんてありません」


 エルヴィナも低い声で続ける。


「アイラ様。あの者たちが臆病で卑怯だっただけです。仲間を見捨てるなど、騎士として恥に値する行為。あなたが責めを負う必要はありません」


 俺も一歩前に出る。


「俺たちは違う。アイラを捨て駒にするなんてこと、絶対にしない。その…なんだ……家族みたいなものだろう…」


 頭を搔きながら答える。


 小恥ずかしいセリフの甲斐あってか、アイラは静かに顔を上げる。


 金色の瞳に、涙が光っていた。


「……はい」


 フィリアが嬉しそうに微笑む。


「そう……家族! ファミリーですわ! セレスティアファミリー。そう名付けたのは、伊達ではありませんわ」


 アイラは唇を震わせ、そしてようやく小さく笑った。


「……ありがとうございます」


 その笑みは弱々しかった。だが、前へ進もうとする意思があるようにも見えた。


 そして俺たちは、洞窟の奥を見つめる。


 ここに踏み入る意味は、図らずも大きなものとなった。


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 【資産合計】1,434,178ディム

 【負債合計】0ディム

 【純資産】1,434,178ディム

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