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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第六章 「アキュムレーション」

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第47話 「冒険者アルヴィオ」

 フィリアが「セレスティアファミリー」と高らかに宣言したあと、部屋の空気は妙な温かさに包まれた。


 エルヴィナは呆れたように天井を仰ぎ、アイラは「ファミリー……」と小さく呟いて頬を赤らめている。


「気恥ずかしい名前だな」


 俺がぼやくと、フィリアはすぐに身を乗り出してきた。


「恥ずかしいだなんて、とんでもない! 素晴らしい名前ですわよ。ねえ、アイラさん?」


「えっ、ええと……その……」


「ほら、アイラさんも賛成しているではありませんか!」


――いや、どう見ても困ってるだろ……


 俺は心の中で突っ込む。


「では、早速登録へ行きましょう」


「……ああ」


 フィリアの笑顔を見てると、そう頷くしかなかった。


 そして、昼前。セレスティア商会での話し合いを終えた俺たちは、少し早めの昼食をとって早速行動に移すことにした。


「準備はよろしいですわね? では、行きましょう!」


 フィリアが軽快な足取りで玄関を飛び出す。


 エルヴィナが慌てて後を追い、アイラは小走りでついていく。

 

 俺は、アクアレイジ――魔法銃を肩にかけ、後に続いた。


 リアディスの冒険者ギルドは、市街の外れにひっそりと建っていた。


 二階建ての木造建築。壁には年季が入り、扉はところどころ欠けている。


 取引所や商会のような華やかさは一切なく、看板も色褪せて読みにくい。


「……地味だな」


 思わず口をついて出た。


 エルヴィナがすぐさま説明する。


「リアディスの近郊には強力な魔物が出ませんからね。稼ぎたい上位の冒険者は、みなサンクタム山脈周辺の都市に登録します。あちらは魔獣の数が桁違いで、腕に覚えのある者なら大金を得られる。ここは、言ってしまえば新米のためのギルドです」


 なるほど、と俺は納得した。


 つまり、ここで活動するのは小規模な冒険者か、あるいは趣味半分で魔獣を狩る程度の連中というわけだ。


「地味なのは悪くないと思いますけど……」


 アイラが小さな声で呟く。


 中に入ると、さらに質素さが際立った。壁には依頼書が貼られてはいるものの、内容は「家畜の護衛」「迷子探し」「畑荒らし退治」といったものばかりだ。依頼を待つ冒険者も、革鎧を着た若者や農夫上がりらしい中年が数人。賑わいはなく、ただ淡々と椅子に座って時間を潰している。


「……本当に、冒険者ギルドか?」


 俺の疑問に、フィリアが答える。


「ええ、正式な組織ですわ。ただ、みなさまが思い描くような華やかさはありませんけれど」


 受付カウンターに立つと、若い女性が顔を上げた。栗色の髪をまとめた、素朴な雰囲気の受付嬢だ。


「ご用件は?」


 事務的な口調で尋ねてくる。


 フィリアが一歩前に出た。


「わたくしたち、冒険者登録をお願いしたくて参りましたの」


「……承知しました」


 受付嬢は頷き、書類を取り出す。


「では、こちらにお名前と役割をご記入ください」


 フィリアは迷わずペンを取り、「セレスティアファミリー」と記入した。


 横から覗いた俺は、思わず苦笑する。


「やっぱりその名前でいくのか」


「もちろんですわ! 素敵でしょう?」


 ……まあ、本人が満足しているならいいか。


 登録の手続きは意外と簡単だった。


 名前、職能を記入し、血判を押すだけ。


 フィリアは堂々と「攻撃魔法士」と書き、エルヴィナも「前衛戦士」と記入。アイラは不安げに「支援魔法士」と書き込む。


 もちろん、フィリアとエルヴィナは、偽名だ。


 最後に俺の番だ。


「えーと……アルヴィオ・アディス。職能は……後衛、戦術指揮?」


「戦術指揮、ですか? その銃は、支援用ですか?」


 受付嬢が不思議そうに首をかしげる。


「まあ、そんなところだ。直接戦うのは苦手だからな」


「わかりました。それで登録させていただきますね」


――こうして、俺たち「セレスティアファミリー」は正式に冒険者として登録された。


 手続きを終えると、登録証となる小さな金属板が手渡された。アルカナプレートとは違い、単なる身分証のようなものだ。それでも、これがあればダンジョンに入る許可が得られる。


 登録証を受け取った直後、フィリアが楽しげに声を弾ませる。


「これで晴れて冒険者パーティですわ! 善は急げですわ!早速、ダンジョンへ向かいましょう」


 俺たちはそのまま、リアディス郊外の初心者向けダンジョンへ向かうことになった。

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