表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第六章 「アキュムレーション」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/126

第46話 「閑散市場と魔法士査定」

 リアディス取引所の朝は、いつになく静かだった。


「……今日は、静かだな」


 普段なら怒号や歓声が飛び交うこの場所も、まるで昼下がりの公園のように穏やかだ。


 理由は明白だった。数日後に迫る公開査定、その準備のために多くの魔法士たちが姿を消していたのだ。


 トークンコアの前に立つ投資家たちもまばらで、売り買いの量も少ない。


「やっぱり、公開査定前だからでしょうか」


「だろうな。魔法士たちにとっては、査定で実力を見せる方がよっぽど大事だ。相場は二の次ってやつだ」


 魔法士にとって、査定は一種の晴れ舞台だ。実力を測り、等級を再評価する一大行事だ。投資家としては、嘆かわしいことだが魔法が絶対の価値を持つこの世界では仕方ないことだ。それに向けて準備や訓練を優先するのは自然な流れだろう。


 俺は腕を組み、トークンコアの光を見上げた。


 オーダーフォームの流れが明らかに少ない。値動きも鈍く、俺たちが張り付いている意味は薄い。今日は潮時だろう。


「どうしますか?」


「そうだな。フィリアのところに戻って、次の準備をしよう」


「次ですか?」


「公開査定の準備……俺たちもやっておいた方がいいな」


「……査定、ですか」


アイラは唇を噛みしめる。


「わたし……ちゃんとできるでしょうか」


 弱気な声。俺は少し笑い、軽く首を振る。


「心配するな。できるかどうかじゃない。どうやって準備するかだ」


 アイラの視線がこちらに戻る。


「行こう。商会に戻って、相談だ」


 俺たちは取引所を後にし、リアディスの雑踏へと歩み出た。


 セレスティア商会に戻ると、広間ではフィリアが待っていた。


 金髪を背に流し、上品な笑みを浮かべて椅子に腰掛けている。その隣には、背筋を伸ばしたエルヴィナが控えていた。


「おかえりなさい、アルヴィオ。取引所はいかがでしたかしら?」


「人が少なすぎて勝負にならなかったな。今日は休みにする」


「やはりそうなのですね……」


 フィリアは手を顎に当てて、考える素振りをする。


「やはり皆、査定を意識しているのですね」


 エルヴィナが下から抱えるように腕を組み、真面目な声で続ける。


「お嬢様も、そろそろ対策を練るべきかと」


「対策?」


 俺が訊くと、フィリアはすぐに頷いた。


「ええ。公開査定で課される内容は、属性ごとの攻撃魔法の披露と、その威力の計測です。おそらく、戦闘においてどれだけの力を出せるかを見極めるはず。準備なく挑むのは危険ですわ」


 アイラの肩がさらに強張った。アイラは下を向き、小さな声で言った。


「わたし……威力なんて、ほとんど出せません……」


「大丈夫だ」


 俺は即座に言い切った。


「だからこそ、今から試すんだ」


 俺には、確信があった。俺が魔力を買えば、アイラはどこまでも強くなれる。


 フィリアがにこりと笑う。


「さすがアルヴィオ。前向きですわね。では、どこで試しますか?」


「街中じゃ無理だ。……初心者向けのダンジョンに潜ろうと思う」


 その言葉に、アイラが驚いて顔を上げた。


 フィリアは瞳を輝かせ、すぐに賛同する。


「素晴らしい案ですわ! ぜひ、わたくしも同行させてください」


「お嬢様……それは」


 エルヴィナが苦笑混じりに溜息をついたが、フィリアの表情を見て何を言っても無駄だと悟ったのかすぐに頷いた。


「仕方ありませんね。護衛としてお供いたします」


 俺は肩をすくめた。


「結局、全員で行くことになるのか」


「ええ、もちろんですわ!」


 フィリアは子供のように胸を張った。


「ただし」


 フィリアは少し真面目な顔になる。


「ダンジョンに入るには、冒険者登録が必要です」


「冒険者登録……か」


 俺は腕を組んだ。


「魔法士ギルドの会員は、自動的に冒険者として登録されますわ。わたくしのランクはB。エルヴィナはC。アイラも魔法士ギルドの一員ですから問題ないですわ」


「は、はい……」


 アイラが小さく答える。


「では、アルヴィオは初登録になりますね。通常はFからですが……リアディス近郊のダンジョンはほとんど、Fランクでも入れるから問題ありませんわね」


 フィリアは楽しそうに話を続ける。


「前衛はエルヴィナ、攻撃魔法士はわたくし、支援はアイラ。そしてアルヴィオは後衛、戦術指揮兼サポート役。……完璧ですわ!」


フィリアは嬉々として言い切った。エルヴィナは肩をすくめつつも、否定はしない。アイラは俯いたまま、それでも小さく頷いた。


「パーティー名も必要ですわね」


「パーティ名?」


 俺は思わず眉を上げる。


「ええ、冒険者登録にはチーム名が必須ですの。わたくしの考えは……『セレスティアファミリー』!」


「……ファミリー?」


「ええ。皆、家族のように支え合う仲間ですもの」


 フィリアは本当に楽しそうに笑った。その笑顔を見ていると、何も言い返せなくなる。エルヴィナは小さく咳払いして、渋々頷いた。


「では、早速登録へ行きましょう」


「……ああ」


 まったくもってアットホームな職場だ。


◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

 【資産合計】1,434,232ディム

 【負債合計】0ディム

 【純資産】1,434,232ディム

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ