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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第四章 「ベアリッシュ・エンガルフィング」

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第30話 「ホップ」

~憲章暦997年1月20日(火の日)~ 


 俺は机に広げた書類と、アルカナプレートから浮かぶデータを交互に見つめていた。


 今日から、本格的に取引へ復帰するためだ。


 アイラの魔力供給の仕組みは、昨日の検証で概ね確立した。


 アクアレイジの魔力回路を移植し、アルカナプレートを通してアイラに魔力を流す。


 その結果、アイラは再び魔法を扱えるようになり、俺たちはまた取引の場に立つことができる。


 でも、あくまで()()()()()()というだけだ。本当に通用するのか、それを確かめるのは今日だ。


 俺は机の上に置いていたアルカナプレートを手に取り、しっかりと握りしめた。


 今日から本格的に取引を再開する。


 しかも、いきなり本番だ。この勝負に、俺たちの全てがかかっている。


「アイラ、そろそろ出発するぞ」


 背後から声をかけると、アイラが振り向く。少し緊張の色が見えるが、体調はすっかり戻ったようだ。


「はい。準備万端です!行きましょう!」


 言葉に力を込めようとする気持ちが伝わってくる。

 

 アイラには無理をさせたくない。


 だけど、時間はない。奴隷オークションまで、残された時間は僅かだ。


 俺たちは、街の中心――トークンコアのある取引所へと向かった。


 リアディスの街は朝から賑やかで、行き交う人々の声や商人の呼び込みが耳に入る。


 この街の空気は、金の匂いに満ちている。


 取引所に着くと、トークンコア前の広場は、すでに熱気に包まれていた。


 アイラは、その光景をじっと見つめていたが、やがて意を決したように口を開いた。


「アルさん、始めましょう」


「……ああ」


 アイラの体が、トークンコアの魔力場をしっかりと掴んで浮遊していく。


 取引開始の数秒前、トークンコア周囲は一瞬の静寂に包まれる。


 カンカンカンカン!!!


 取引開始のベルがけたたましく鳴る。


<アイラ!リクエスト・リンク、展開、深緑商会同盟の株価推移を見せてくれ!>


<はい!>


 アイラの周囲に淡い光が広がり、魔法陣が浮かび上がった。


 トークンコアとの接続は、問題なく完了した。


 アルカナプレートの残高を確認する。概ね、昨日の実験通りのディムの消費量だ。


 <アイラ、注文だ!深緑同盟を成行で100株買いを頼む>


 <はい!オーダーフォーム行きます!>


 再び、アイラの周囲に淡い光が走り、魔法陣が展開される。


 <深緑商会同盟、19.5ディムで100株できました!>


 <ありがとう!確認する>


 アルカナプレートを確認する。確かに出来ている。約定代金を差し引いた魔法使用に伴うディムの消費量も問題ない。


――これならいける。


 俺は内心で安堵する。


 アイラの動きはまだ硬さが残っていたが、一つ一つ丁寧に魔法を使いこなしていた。


 その姿を見ながら、俺は心の中で問いかける。


――本当に、これで良かったのか?


 アイラを取引所(戦場)に連れてきて、戦わせることが。


<……アルさん、次の注文を>


 アイラの声が俺を現実に引き戻す。

 

 俺は黙って頷き、次の指示を送った。


 時間が経つにつれて、アイラは、すこしずつ感を取り戻していった。


 魔法の発動速度も上がり、次々と注文が処理されていく。


 その様子を見て、俺の胸には新たな感情が湧き上がってきた。


 そんな時だった。冒険者関連銘柄の価格に急激な変動が起きた。


――センチネル王国のダンジョンに新たな巨大階層が発見された。


――需給が崩れる。


――相場が荒れる。


 今までのように、慎重に取引している場合じゃない。


 俺はすぐさま指示を飛ばした。


<今だ、アイラ! 一気に仕掛けるぞ!>


<はい!>


 アイラの返事は力強かった。


<順番に行くぞ>


 俺は、瞬時に関連銘柄を思い浮かべる。


【トークンコア登録番号01414】冒険者クラン 岩窟の玄翁(ケイブハンマー)

【トークンコア登録番号06861】冒険者クラン サンクタム同盟

【トークンコア登録番号06773】冒険者クラン センチネル冒険者組合

【トークンコア登録番号02768】ツヴァイ商会

【トークンコア登録番号09308】アルカ魔法船

【トークンコア登録番号08361】前線銀行


 とりあえずこのニュースで動く銘柄を列挙する。特に冒険者クランの銘柄は、初動で素早く買う必要がある。


<今だ、アイラ! 一気に仕掛けるぞ!>


< 岩窟の玄翁ケイブハンマー、サンクタム同盟、センチネル冒険者組合をそれぞれ700株、300株、400株ずつ成行で買ってくれ>


<はいっ!わかりました!>


 アイラの返事は力強かった。


 アイラの周囲に、幾重もの魔法陣が展開される。


 流れを読む。初動で直接的に関連する銘柄が反応したあとは、間接的に恩恵を受ける銘柄に物色が向くのが相場の常だ。


<アイラ、ツヴァイ商会、アルカ魔法船、前線銀行の推移を教えてくれ>


<今行きます!>


 アルカナプレートに次々と情報が表示される。最初に買った銘柄のケアをしながら次々と売買を繰り返す。


 6件、8件、10件――注文は次々に処理され、俺たちは相場の波に乗っていく。


「こんな発注速度……信じられません……」


 背後から、リアナの声が聞こえた。リアナは驚きの表情で、俺たちの取引を見守っていた。


 周囲の魔法士たちも、目を見張りながら俺たちの様子を注視している。


 俺は、そんな視線を気にせず、ただ前を見据えていた。


 この力を、無駄にはしない。


 もっと効率的に、もっと早く。


 アイラの速さを活かすには、俺の判断速度すら足かせになる。


――もし、定型の注文を魔法で自動化できたら


 俺の頭の中で、新たな戦略が形を成し始めていた。


 魔導プログラム売買――それが、俺たちの次の武器になるはずだ。


 取引を終えた俺たちは、取引所のホールで手続きをする。


 アルカナプレートには、想定を大きく上回る利益が記録されていた。


 このままいけば、間に合う。俺たちは、リーリアを救い出せる。


「アイラ、ありがとう」


「……まだまだです。でも、私、もっと頑張ります」


「でも、無理はするなよ」


 そう言うと、アイラはやさしい笑顔で頷いた。


◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

 【資産合計】277,156ディム

 【負債合計】78,677ディム

 【純資産】198,479ディム

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

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