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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第四章 「ベアリッシュ・エンガルフィング」

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第29話 「リスクリワード」

 翌日の朝、カーテンの隙間から柔らかな陽光が差し込む。静かで、どこか満ち足りた空気だった。俺はリビングテーブルの置いた検証メモを再確認していた。


 今日は取引を休む。


 そう決めたのは、アイラのためでもあり自分のためでもあった。


 昨日の実験は成功だった。アイラに魔力を流す仕組みは、思った以上にうまく機能した。だが、それを本格的に取引に活かす前にもうひとつ確かめておきたいことがあった。


 「リクエストリンク」と「オーダーフォーム」。取引所で必要不可欠な二つの魔法が、どれほどのディム、つまり魔力を消費するのか、アイラの負担がどの程度なのか。取引に戻るには、それらを正確に把握する必要がある。


「おはようございます」


 アイラが軽く微笑みながら、リビングに入ってくる。


 顔色も良く、昨日までの表情とは全く違って見えた。


「体調はどうだ?」


「はい。すごく、いいです」


 ポーズ付けながらそう言うアイラの笑顔に、俺の肩の力が少し抜ける。


 朝食を簡単に済ませたあと、俺たちはテーブルの中央にアルカナプレートを置き、検証の準備を始めた。


「まずは、リクエストリンクからいきましょうか」


 アイラは、魔法陣を展開しながら呟いた。


 淡く青白い光が術式に沿って走り、リビングに微かな振動が広がる。


 アルカナプレートに、取引所の価格情報と気配値が浮かび上がった。


「……消費ディム、0.019。ほとんど誤差の範囲だな」


「ですね」


「リクエストリンクは情報のやりとりだけだから、そんなに魔力は必要ないのか」


 俺が記録用の紙に数字を書き込む。何度か試しても、おおよそ0.02ディムの魔力消費量だった。リクエストする情報の多さもあまり関係ないようだ。


 次は『オーダーフォーム』だ。


「買い、サンクタム同盟、240株、成行」


 アイラが、さっと注文情報を魔術陣に組み込む。再び光が走るが、トークンコアがないため、魔法は空中に霧散していく。


「……これは、0.201ディム……これも、問題ないレベルだ」


「思ったよりすくないですね」


 俺は小さく息を吐いた。これなら、今まで通りのスタイルで取引を続けられる。


「体の負担はどうだ?」


 俺が尋ねると、アイラは一瞬きょとんとした後、笑みを浮かべて答えた。


「大丈夫です。少し緊張しましたけど、魔力的な負担はないです。当たり前ですけど…」


 アイラは、そう言いながらアルカナプレートを優しく撫でる。


「そうか。無理はするなよ」


 俺がそう言うと、アイラは安心したように微笑んだ。


 アイラは魔力のこと、家のこと。いろいろなものを背負っている。そのすべてを解決することはできないけど、少なくとも俺はアイラの隣にいられる。


 その後も、何度か検証をしたが、オーダーフォームのディムの消費量は0.2ディム程度で安定していた。


「じゃあ、休憩しよう。あとで何か甘いものでも作るか」


「えっ……アルさんがですか?」


「甘いものくらい、俺だって作れるさ。たぶん」


 アイラがくすりと笑った。その笑顔がやけにまぶしく感じられた。

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