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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第三章 「アセンディング・トライアングル」

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第21話 「アクセラレーション」

~憲章暦997年1月5日(星の日)~


 朝早くから俺たちは取引所に出向いて準備を整えた。


 取引開始10分前アイラはすでに魔法陣を展開し、リアルタイムのデータを読み取る準備を完了していた。どうやらリクエストリンクの圧縮版はうまく機能しているみたいだ。そして、追加した仕掛け(ギミック)も順調だ。


 とは言え、リアディス取引所の株式市場には、世界中の冒険者クランやパーティ、商会や運送会社、魔道具工房や傭兵組織まで5000以上の銘柄が上場している。その広大な市場で、アイラの負担も考慮して取引対象を絞り込む必要があった。


 最近のニュースや取引量の多さ、日中の変動率(ボラティリティ)の高さを考慮して、5銘柄を取引対象に決めた。


【トークンコア登録番号06861】サンクタム同盟

【トークンコア登録番号02670】フットプリント

【トークンコア登録番号09107】ロピカルハ海運

【トークンコア登録番号08058】スリーミスリル商会

【トークンコア登録番号08411】大ラルトロン銀行


 特にロピカルハ海運については、誤って海獣領域に入ってしまった商船を失ったというニュースが入ってきた。


 海獣領域――それはファロン洋の西の果てに存在する、強力な海洋型魔獣が大量に生息する危険な海域だ。


 人類は、これより西の地域に進出できずにいる。同様に、大アルカ大陸の東の果ての魔獣領域も人類の東進を阻んでいる。すなわち、この世界の人類は、西の海獣領域と東の魔獣領域に挟まれた地域に限られて生存を許されているのだ。


 取引に戻ろう。ロピカルハ海運は取引開始直後に激しい値動きが予想される。誤って海獣領域に入った商船を失ったというニュースにより、売り注文が殺到するのは間違いない。

 

 俺たちはこの値動きを狙って利益を得るつもりだ。


――事故は買い、事件は売り。


 今回のロピカルハ海運の件は事故だ。商船1隻の損失が業績に与える影響も小さい。


 おそらく売りをこなせば一気に反転するだろう。そこを狙う。


 カンカンカンカン!


 取引開始の鐘が鳴る。


 予想通りロピカルハ海運には売り注文が殺到していた。


 前日の終値は、221.0ディム。


 俺たちは、念話を開始する。


<アイラ、どうだ?データは読み取れているか?>


<はい、アルさん。予想通り売り注文が殺到してます。現在の2分足のRSI(アールエスアイ)は24、売られ過ぎの水準です。おそらく反転のタイミングが近いかと>


 アイラは魔法陣に集中しながら、冷静に報告を続けていた。


――RSI。株式のチャートをもとにしたテクニカル指標の一つだ。


 リクエストリンクの術式にさらに改良し、テクニカル指標を計算できるようした。この世界でテクニカル分析がどこまで通用するかわからないがやってみる価値はある。手元のアルカナプレートには、情報が次々と表示される。


――201.14ディム。


 俺は即座に判断を下した。


<よし、ここで買いに入る。全力でいくぞ。300株の買いだ>


 アイラは頷き、魔法陣を通じてオーダーフォームをトークンコアに送信した。リアルタイムでの情報が魔法陣に反映され、俺たちの注文が市場に飲み込まれる。


<201.09ディムで180株、201.10ディムで120株の約定が成立しました>


 3分後、ロピカルハ海運の株価は予想通り反転を見せた。急激に売り込まれていた株価は底を打ち、少しずつ回復し始めた。


<アルさん、今は203ディムまで来ました。MACD(マックディ)がゴールデンクロスを示しています。ここから上昇の兆しが見えます>


 また、リクエストリンクに仕込んでいたテクニカル指標がシグナルを発する。


<追撃だ。203.10ディムで100株を買い増してくれ>


 株価は回復の兆しを見せ、徐々に上昇していく。その瞬間の緊張感と高揚感が俺たちを包み込む。


<いいぞ、アイラ。引き続き、トレンドに集中してくれ>


<了解です、アルさん>


 ……


<アルさん、かなり戻ってきました。いま217ディムです>


<いい感じだ。もう少し引き付けたい>


 ……


<来ました。大きな買いが入ってきてます。219.5ディムを超えました>


<よしここで全部売ろう!>


<はい!>


 ここですべての株式を売りに出す。


<219.74 ディムですべて売却できました>


<上出来だな。利益は7千ディムといったところか…>


 俺たちは銘柄を切り替え、同じようにテクニカル指標を駆使して取引を行った。


 サンクタム同盟、フットプリント、スリーミスリル商会、大ラルトロン銀行――それぞれの銘柄で市場の動向を読み取りながら、売買を繰り返した。取引のたびにアイラの魔術回路がフル稼働し、次々と展開される魔法陣がデータを反映していく。


<アルさん、スリーミスリル商会の株価が反転し始めました。RSIが30を下回り、買いシグナルが出ています>


<よし、今が買い時だな。300株、成行で頼む>


 アイラは素早く魔法陣を操作し、トークンコアに注文を送信した。緊張感が漂う中、俺たちは相場の動きを注視し続けた。


<アルさん、MACDもゴールデンクロスを示しています。上昇の兆しが見えます>


<さらに200株を追加しよう。上昇トレンドに乗るぞ>


 次々と繰り返される取引――その結果、5銘柄で合計14,354ディムの利益を上げることができた。


 俺たちは達成感と共に、少しの疲労感を感じながら取引を終えた。


「お疲れ様、アイラ。よく頑張ったな」


「ありがとうございます、アルさん。今日は、なんだか充実した日でした」


 アイラは微笑みながら、少しだけほっとした表情を見せた。


◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

 【資産合計】104,743ディム

 【負債合計】61,435ディム

 【純資産】43,308ディム

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

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