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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第十章 「フラクチュエーション」

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第88話 「フィリアとの契約Ⅰ」

 翌朝。


 フィリアは、絶好調だった。


「さあ、アルヴィオ! 今日は大活躍してみせますわよ!」


「……ほんとに大丈夫なんだろうな」


「当然ですわ! わたくしを誰だと思っていまして?」


 俺の不安なんて一切気にせず、フィリアは颯爽と歩き出した。


 アイラが風邪で休み、代わりに務めることになったフィリア。本人は楽しそうだが、俺は胃が痛い。


 とはいえ、取引魔法士がいなければポジションが動かせない。頼るしかない以上、覚悟を決めて同行するしかなかった。


 リアディス取引所の前に立つと、フィリアは深呼吸しながら胸を張った。


「さあ行きますわよ! アルヴィオ!」


――もうどうにでもなれ!


 そんな心境で、受付へ向かった。


「おはようございます、アルヴィオさん――あっ、セレスティア様も」


 受付嬢リアナが丁寧に頭を下げる。


 フィリアは普段、フィナ・セレスティアという通称で活動している。


 リアナはその名前しか知らない。


「ごきげんよう」


「今日はどういったご用件でしょうか?」


 フィリアは迷いなく言い放つ。


「わたくし、取引魔法士として契約を結びに来ましたの」


「えっ……セレスティア様がですか!?」


「そういうことだ。アイラの体調がすぐれなくて……今日の取引、フィナに頼むことにした」


 リアナは混乱しながらも、職務として案内を始めた。


「そういうことなんですね……わかりました」


「では……契約の間へご案内いたします……!」


 魔法陣が敷かれた契約の間、ここに入るのは三度目だ。


「それでは、契約者は右の陣に、魔法士は左へお願いします」


 俺たちは、所定の場所に移動する。


 リアナが中央に立ち、お決まりの台詞を告げる。


「おふたりの名前、そして心を込めた誓いが、この儀式の核となります」


「それでは、アルヴィオ・アディス様、契約者としてご自身のアルカナプレートをご用意ください」


 アルカナプレートを台座に据えると、魔術式が起動した。


「アルヴィオ・アディス。フィナ・セレスティア。ここに、相互の信頼と意思をもって、トークンコアの加護を受けし契約を結ぶことを誓いますか?」


 リアナがそう言ったところでフィリアが口を挟む。


「いえ、わたくしはフィリア・アリスタルですわ」


「…………え?」


 リアナの顔が固まる。


 無理もない。


 ティタニアの時と同じだ。普段のフィリアはフィナ・セレスティアとして活動している。


 だが、契約は真名で結ばれる。


 隠しようがない。


「ア、アリスタル……?」


 リアナの喉がかすれる。


 アリスタル公爵家の名は、レオリア王国では知らぬ者がいないほどの名家だ。


「ま、ま、まさかの……!? セレスティア様が……アリスタル家の……?」


 リアナの顔から血の気が引いていく。


 フィリアは何事もなかったように微笑んだ。


「普段は偽名を使っていますの。ですが、契約は真名でないといけませんでしょう? ですから、フィリア・アリスタルとして契約させていただきますわ」


「あ、は、はい……っ……!」


 リアナは必死になって儀式進行の態勢を整えるが、明らかに手が震えていた。


 ティタニアに続き、まさか公爵家令嬢まで担当することになるとは……リアナが気の毒すぎる。


「では……っ……続けます……っ……!」


 リアナは咳ばらいをしてから台詞を再開した。


「それでは、アルヴィオ・アディス、フィリア・アリスタル、それぞれの血を、アルカナプレートにお示しください」


 リアナが震える声で宣言した。


「はい」


 俺は慣れた手つきで指先に小さな切り傷を作り、アルカナプレートに滲む一滴を落とす。


 フィリアもまったく動じず、血を落とした。


 血が触れた瞬間――


 魔法陣が、淡く、そして勢いよく輝き始める。


 天井から光が降り注ぎ――


 視界が、真っ白に塗り潰された。


「……っ、来たか!」


 俺は反射的に目を閉じた。


 ――次の瞬間だった。


「きゃあっ!? な、なんですのっ……!?」


 フィリアの悲鳴が横で聞こえた。


「フィリア!?」


 目を開けると、いつもの白い空間――


 だが、今回はフィリアが俺の隣に、同じように宙に浮いていた。


 光も床も境界もない世界。


 ここに来るのは、いつも俺だけだったはずだ。


「ちょ、ちょっとアルヴィオ!? なにここ!? 真っ白ですわ!?」


 フィリアがパニックになるのを横目に、俺はため息をつく。


 そして、案の定。


「やあ。今日は二人セットできてもらったよ」


 あの声が響いた。

次回投稿は12月3日水曜日になります。

よろしくお願いします。

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