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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第九章 「リヴァージョン」

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Short Stories 3 「新商品開発会議Ⅱ」

 昼下がりのセレスティア商会の厨房。


 ヒカリが袖をまくり、勢いよく包丁を握った。


「よーし! 今日こそ新作スナック、完成させます!」


「……また何かするのね、ヒカリ」


 フィリアは隣で腕を組む。


「今日は……フレイジアチップスを作ります!」


「フレイジアって……? 普通に蒸しても焼いても美味しいじゃない」


 フィリアは首をかしげる。


「そうですけど! スナックにしても美味しいはずなんです!」


 ヒカリの脳内ではジャガイモが想像されていた。


 そこへイオナがのぞき込む。


「たしかに、フレイジアは糖質も多いし、油との相性も良いからね。理論上はおいしいスナックはできるはずだよ。僕も興味ある」


「ですよね!?」


 ヒカリは胸を張って、フレイジア球根を薄くスライスし始めた。


 みずみずしい断面から、甘い香りが広がる。


「この香り、熱するともっと良くなるんですよ」


 熱した油にスライスを投入。


 じゅわああっ!


 三人は思わず息を呑む。


「音からして勝った気がします!」


 ヒカリが満面の笑み。


 火加減を見て、ひっくり返すと――


 薄い金色に変わり、端がカリッと持ち上がる。


「色、最高……ですわ」


 フィリアの目が細くなる。


「フレイジアは元から旨味成分があるからね。揚げると香ばしさが増すんだよ」


 イオナが学者口調でうなずく。


 取り出して塩をぱらり。


 ヒカリは震える手で一枚つまんだ。


「じゃ……実食っ!」


 ぱりっ。


「…………っ! 美味しい!」


 ヒカリの瞳が一瞬で星になる。


 続けてイオナも一枚。


「うん、これは……普通に売れる味だね。甘味と香りが引き立ってる」


「わたくしもいただきますわ」


 フィリアがつまむ。


 ぱりっ。


「……うまい!!ですわ……どこか負けた気がする味ですけど、美味しいですわ」


「やった!」


 ヒカリはその場でぴょんと跳ねた。


「これ、屋台で売ったら絶対売れるよ」


 イオナが尾をぱたぱたさせながら分析する。


「そうね。この味なら間違いないですわ!」


 フィリアが顎に手を当てた。


「じゃあ名前は……そのまま!」


 ヒカリは勢いよく宣言する。


「フレイジアチップス!」


「そのままですわね……でも覚えやすくていいんじゃないかしら?」


 フィリアが苦笑する。


「それに、フレイジアの色と香りが残るのは強みだよ。投資家の軽食にもぴったりだし、相場が荒れた日なんて、需要が跳ね上がるんじゃない?」


「よーし、じゃんじゃん揚げます! 新名物誕生です!」


「ちょっと、油は節約してくださいませ……!」


 フィリアの声が厨房に響き、三人の笑い声が重なった。


 こうして――商会の大人気商品・フレイジアチップスは生まれた。


 のちにこのチップスが、小麦暴落相場の日にとんでもない効果を発揮することを――この三人はまだ知らない。

次回の更新は、一日お休みを頂いて11月22日(土)午後の予定です。

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