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俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました  作者: 白河リオン
第九章 「リヴァージョン」

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ティラナ戦役編 エピローグ

 小麦相場の暴落から、ひと月が過ぎた。


 リアディスの街は、いつもの喧騒を取り戻していた。


 市場にはフレイジア粉を使ったパンやパスタが並び、庶民の主食にひとつとしてすっかり定着している。


 ティラナ島での戦いは、レオリア軍の勝利で幕を閉じた。


 アズーリアでは反乱軍が首都アズラフィアに入城し、皇帝ルキウスは失脚した。その後、皇帝は行方知れずらしい。新アズーリア共和国政府とレオリア王国は、現在も戦後処理の協議を続けている。


 セレスティア商会の仕事も、ようやく落ち着きを取り戻していた。


 ティタニアがいなくなってからも、ラウラは気丈に振る舞い、取引部をしっかりと回してくれている。


 「姫様の分まで頑張ります」と笑っていたが、その笑顔には、寂しさを隠せていないように見える。


 そのティタニアからは、いまだに連絡はない。何度か念話を試みたが、反応はなかった。だが、ティタニアに設定したアルカナプレートの残高は、毎日減っている。


 きっと、どこかで動いているのだろう。


 今日は久々の休日だ。


 アイラとヒカリ、ラウラは街へ買い物に出かけた。


 珍しく屋敷の中が静まり返っている。


 俺は、ソファに身を沈めた。


 陽の光が差し込み、カーテン越しに柔らかな風が頬を撫でる。


 ハーブティーの香りがほのかに漂う中、知らぬ間にまぶたが重くなっていった。


――ああ、久しぶりに、静かな午後だ。


 いつの間にか、意識が遠のいていった。


 どれほど眠っていたのだろう。


 夢の底で、誰かが呼ぶ声がした。


「……アルヴィオ」


 かすかな囁き。


 懐かしい声だった。


 もう一度、その声が呼ぶ。


「――起きて、アルヴィオ……起きないと、キスしちゃうわよ?」」


 頬に、温かな感触が触れた。


 柔らかく、やさしく。


 ゆっくりと目を開けると、そこに――ティタニアがいた。


「……ティタニア……?」


 瞳が、いたずらっぽく細められている。


「お寝坊さん。久しぶりね、アルヴィオ」


 言葉を失う俺を見て、ティタニアは笑った。


 その笑顔は何も変わっていなかった。


「……帰ってきたのか」


「借りたものを返しに来ただけよ」


「でもね、すぐにお金は返せないの。アズーリアはもう帝国じゃないし。私は王女じゃなくなっちゃったしね」


「返せるときでいい」


 俺の言葉に、ティタニアは少し口元を緩めた。


「そう言うと思った。じゃあ――少しずつカラダで返そうかしら?」


「……冗談はよせ」


「……半分は本気よ」


 ティタニアは小さく笑い、ソファの肘掛けに腰を下ろす。


 昼下がりの陽光が、銀色の髪をやわらかく照らしていた。


「……本当に、帰ってきたんだな」


「ええ。こうしてまた、アルヴィオの顔を見られてうれしいわ」


 ティタニアの笑みがやわらぐ。


 その横顔を見ながら、俺も静かに息を吐いた。


「おかえり、ティタニア」


 ティタニアは少しだけ頬を染め、微笑んだ。


「ただいま、アルヴィオ」


 その言葉は、穏やかな午後の光の中に溶けていった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

第二部にあたる「ティラナ戦役編」はこれで完結となります。

よかったら下の☆☆☆☆☆から評価をいただけるとめちゃくちゃ励みになります。


次回は、ショートストーリーの投稿になります。それ以降は「楽園の夢編」が始まりますが、筆者が年末年始の繁忙期に入りますので、これまでのような毎日更新がしばらくできなくなる思います。しばらくは、最低週3回程度は更新したいと思います。詳細は決まり次第あとがきにてお知らせします。


近況は、筆者のXアカウントで確認いただけると幸いです。

引き続きよろしくお願いします。

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