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短編の内容はここまでです。

「それでもお義姉様は冷酷よ、殿下を悪く言わないで」

 あら義妹はまだ反撃の余地があると思っているらしい。



「せめて正直に、見た目で婚約者を選びたいとおっしゃって欲しかったのよ」


 まあ聖女との破談など陛下に断られるのが目に見えているから、私を偽聖女にしようとしたのだろう。



「殿下、そのあたりでお収め下さい、人の目も多くございます」

 メガネ君が必死に殿下を諫める。


 まあこっちは収めてあげないけど。




「大体、殿下はわたくしを偽物で魔女と断言いたしましたが、我が国では魔女と聖女はそもそも同じ存在です」


「え、そうなのか」

「まさか、お義姉様の嘘よ」



 

「国が普段から管理している魔女が聖女。災害時には国のために働くと契約しているのが認定魔女。野放しの無免許魔女もいるわね。もちろん魔法使いも」



 メガネ君がこくこくうなずいている。

 

「そんなことも知らなかったのね」


 もう二人は何も言えない。


「おわかりいただけたのなら失礼いたしますわ。ごきげんよう殿下、マルガリッタとお幸せに」


 私は優雅にお辞儀をした。

 




     * * * *





「ごめんなさいね」


 花が咲き乱れるある日、私は王妃様とお茶をしていた。


 理由はあの日の騒ぎの謝罪だ。



「あの子にはきつく叱っておいたわ」


 その後、殿下はおろかな判断の責任を問われ王太子の立場をはく奪された。

 もちろん私との婚約も破棄だ。向こうの有責で。


 実は、別に王子に恨みはない。

 そのことは王妃様にも伝えていたのに。


「他の子に目移りするなんて、いけないわ」

 らしい。


 まあ法律も覚えていないし部下の報告書もろくろく読んでいなかったらね。


 しょうがないか。



「それで、マルガリッタ嬢の処罰なのだけど、あんなに軽くてあなたは良いのかしら」



 大聖女アルスラの遺言状は、もちろん偽物と判断された。


 王族をたばかった罪で彼女は拘束される。

 まだ十代の小娘ではあるが、これは重罪だ。



 本人は義姉が聖女とは思えなかった、殿下を愛するゆえに事件を起こしてしまった、遺言状は知らない人間からもらったと言い続けているらしい。


 文書偽造の罪はまだ立証できていない。




 両親は義妹の計画は知らなかったようだ。

 まあ、知っていたら止めるだろうし。あんな茶番に賛成するほど愚かではないだろう。



 

 だから我が家に対する処分は父の引退ですんだ。


 しかしあの日、言葉は濁したが全部ぶちまけたせいで、前妻の娘をないがしろにする伯爵の悪評は瞬く間に社交界に広まった。


 現在領地で父は義母と一緒に引きこもっている。



 今は私が伯爵だ。



 そして王家からの迷惑料として私は求めた。義妹への処罰を決めさせて欲しいと。


 受け入れてくれた陛下と宰相閣下の前で私は刑を宣言した。



「あの子にはわたくしと同じ修行をしてもらいますわ」


 遺言書の偽造をのぞけば、あの子の罪は自分こそが真の聖女であると殿下を騙したことである。

 だったらそれを本当にしてしまえば罪は消える。



 私の要求は、義妹が『三年間正式に修行する』ことだけだった。

 そして私が課された修行‥‥それは険しい山の岩壁に建つ神殿に寝泊まりし、祈りをささげること。


 近くに村さえないから、生活はほとんど自給自足。

 特に水汲みは苦行である。



 果たしてあの子に耐えられるかどうか。




 そして三年の修業が終わっても、当主の私はあの子を勘当している。

 義母の実家にも圧力をかけたから、だれも迎えに行かないだろう


 身寄りのない平民が、あの場所から自力で抜け出すことは不可能だ。



 おそらく一生を聖女として神殿ですごす。



 そんなの流刑とどこが違うんだろう?




「あの子にとっては、十分な罰です」


 きっと私は義妹が言う通り、冷酷なのだ。




「わたくしとしてはお詫びの意味を兼ねて、あなたに新しい縁談を紹介したいわ」


「う~ん、伯爵家の財政は握りましたし、一人でゆっくりしたいですね。神殿での役割もありますから、今は結構です」



 愛か仕事かを天秤にかけ、あの時私は仕事を取ったのだ。




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