18
日常が戻ってきた。
私は一日おきに神殿の業務と伯爵としての務めを果たす。
貴族に友達は少ないし、その少ない友人はみんな神殿の女官だから、お茶会の誘いも来ない。
たんたんと過ぎる時間。
社交シーズンまではそれが続くと思っていた。
リチャードから手紙が届いた。
会って話したいのだそうだ。
まあ、あんなネタばらしをされたら、恨み言の一つも言いたいだろう。
(黙って説教されるか)
他家との関りも大切だ。
指定した日時きっかりに彼は我が家にやって来た。
「ようこそいらっしゃいました」
「聖女様にはご機嫌麗しく存じます」
固い。
「以前の様に親しくお話はできませんか?」
「申し訳ございません。今の僕はただの法衣貴族、伯爵家当主で聖女であられる貴方とは身分が‥」
それはそうだけど。
私の胸がギュっと痛んだ。
「あなたを騙したことは悪かったわ。でも、二人の友情は本物だったと信じたいのよ」
リチャードは眼鏡をクイッとした。
「つまり‥ 今の僕とも親交を深めたいとの解釈でよろしいでしょうか」
「ええ、もちろん」
「それでは‥一緒にお茶や食事を楽しんで、一緒に遊びに出かけても良いとお考えでしょうか?」
「ええ」
私の顔は赤くなってきた。
改めて確認されると恥ずかしいのよ。
「で、ではルイーズと呼んでも?」
「もちろんよ、リチャード様」
やっと彼がにっこり笑った。
避暑地でずっと見ていた笑顔だ。
「良かった‥ 嫌われたかと思っていたんだ。さよならの一行だけで君はいなくなったから」
それは申し訳なかった。
「また会ってくれるかい」
私はうなずく。
そして彼は私を食事に連れ出し、観劇に連れ出し、買い物につき合わせた。
リチャード様の休日はいつも一緒な気がする。
「ところで、ドレスは新調しないのかい?」
「以前ので良いかと」
公爵様に送ってもらったあのドレスは、まだ社交界には着ていない。
「あれは夏服だろう。冬用は新しく作らなくちゃ」
確かに冬の社交シーズンに備えて今から準備するのはおかしくない。
「そうね」
去年まではろくなドレスがなかったのだから、作るのはしょうがないか。
「今度こそ僕に贈らせて欲しい」
「え」
たわいない会話が急展開した。
次回最終回! 見逃すな、 一瞬で終わる恋愛ターン!




