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「今日は遠乗りに行こう」
一晩すぎると、リチャードは馬を二頭引いてきた。
「どちらに?」
「町まで」
それは遠い。
馬の背に揺られて、それでも私は浮かれていた。
(この方といられるのも後わずかなのにね‥変だわ)
町に到着するころにはくたびれてしまった。
「無理をさせたね、あそこで休もう」
カフェでレモネードを頼む。
冷たくて甘酸っぱいそれは二人の喉をうるおした。
リチャードが行きたかったのは服飾の店だった。
「まあ若様じゃありませんか、御用があればこちらから伺いますのに」
「明後日、我が家でパーティーをするんだ。彼女に見合うドレスを頼む」
ん、聞き間違えだろうか?
「えっと‥リチャード様? ドレスはもう持っていますから」
「別に、いくらあっても構わないだろう」
リチャードはなぜかむくれている。
「いただけません」
私は断固として断った。
リチャード様が気遣ってくれるのは、村娘のルイーゼだ。
一緒に遊びに行くくらいなら楽しかったけれど、高価なプレゼントを贈られるなんて‥
私は彼を騙したいわけじゃない。
「記念に、なるかと思って」
「それならもういただきました」
首元のペンダントを見せる。
「そんな粗末な物では僕の気が済まない」
「粗末‥」
私にとっては宝物なのに。
「私たちはただのお友達ですわ。高価な贈り物なんて不要じゃない」
言ってから後悔した。
リチャード様も苦い表情だ。
「それではそちらが普段用で、パーティー用をお選びになっては」
店員さんが気を利かせて、小粒の宝石を進めてくれた。
「お友達にはちょうど良いかと」
まだ気まずい雰囲気だけど、私は小さなアメジストがはめこまれたブローチを選ぶ。
「似合うかしら」
襟元に留めると、リチャード様はやっと笑ってくれた。




