表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義妹が真の聖女? 法的根拠はあるのかしら  作者: ノーネアユミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

13

 休暇は本当に楽しい。



 リチャードは乗馬を教えてくれた。

 初めての経験だったけど、大人しい馬のおかげで少しは上達する。



 馬に乗れるようになると、二人で遠出だ。


 小川で冷たい水に足を冷やし、農家でパンとチーズを売ってもらう。

 素朴な味は公爵邸で出される物とはまた違ったおいしさだ。


 村の市にも出かける。

 木工のペンダントを、リチャード様がプレゼントしてくれた。


 雨の日は別館の厨房で、料理人とお菓子作り。

 二人で粉だらけになってクッキーを焼く。





 時間はどんどん過ぎ去って、気がつけば残りは一週間を切っていた。



「そろそろ休暇も終わりだな」


 夕飯時、公爵様のつぶやきに私はハッとした。


「リチャード様は王都に戻ったら、どうされるのでしょうね」

「文官を目指すと言っておった」


 妥当な願いだ、おそらくかなうだろう。



「さみしくなりますね、その‥夏中お孫さんを取ってしまって申し訳ございません」


 後悔があるとしたら、リチャードと公爵の時間を奪ってしまったことだ。


「気にせんで欲しい。元々あの年頃のモンが年寄りと毎日顔をつき合わせることはせぬ。聖女様のおかげで、二日に一回は本邸に顔を出していたのだから、こちらが礼を言う立場かな」


 それなら良かった。



「ああ、それから五日後にパーティーを開こうと思う。最後くらい孫も顔を出すだろう」

 



    ****




「ルイーゼ、今度本館でダンスパーティーがあるんだ。ダンスの練習につき合ってくれるかい?」


 私が畑に出るとすぐ、リチャード様につかまってしまった。



「もうすぐ王都に帰らなくちゃいけないんだ」


 サロンでステップを踏みながら彼はつぶやく。


「宰相は無理だろうから文官試験を受けたよ。無事合格だ。法衣貴族も悪くない」


 いつもするような会話。

 でも顔が近い。体も。


 私は顔を真っ赤にしながら、何とか足を動かす。



「こんなにダンスが上手いなら、君もパーティーに出ればいいよ」


 出席は決定しているんだけどね。ルイー()は。


「私には無理ですよ」

 ルイー()には。


「ドレスだったら僕が贈る」

「必要ありません、もう持っていますから」

 

 彼の瞳がちょっと悲しそうに動いたのは、気のせいだろうか。


「じゃあ、明日はそれを着た姿を見せてくれ」




 部屋に戻りクローゼットを開く。

 中には村娘にふさわしくない豪華な生地のドレスが下がっている。


「さすがにこれは着て行けないし」


 それはパーティー当日に着ることにして、今はそれ以外でまあまあ可愛らしくシンプルなのを手に取る。


(汚しちゃいけないって、神殿に行く時しか来ていなかったはず)


 ちょっと裕福な庶民が持っていても、おかしくはない一品。




 畑の見回りの後、手と顔をきれいに洗ってドレスを持つ。

 別邸ではメイドさんに手伝ってもらいながら着付けを終えた。


 髪も軽く結ってもらい、木のペンダントを首にかける。


 ドキドキしながら、サロンに入った。


「支度ができました」


 リチャードが立ち上がる。


 彼はそのまま、三秒間は目を見開いていた。


(さすがにこの姿じゃ、村娘のフリは無理があったかな)

 ちょっと後悔する。


「お屋敷のみなさんが飾り立ててくれました」

 そっと彼の隣に立つ。


「ダンスの練習、しましょうか」

「あ、ああ」


 リチャードは、いつもよりぎこちなくホールドを取った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ