12
リチャード視点 その2
本館でお爺様と朝食を取ると、しょっちゅう夕食も誘ってくる。
僕と聖女様の仲を取り持ちたいようだが、今の僕には新しい縁談はまだ早い。
ルイーゼとの友情で十分だ。
彼女とはどんどん仲良くなる。
先日までは失脚した元王太子のことや破談になった婚約者のことばかり考えていたのに、今は気がつくとルイーゼのことを考えている。
ルイーゼが面白いと言っていた恋愛小説は僕が読んでも楽しめた。
僕が勧めた歴史小説をルイーゼは夢中になって読んでくれる。
次は一緒に何をしようか?
今日はすばらしい一日だった。
まさかルイーゼとピクニックに行けるなんて。
彼女も僕にずいぶん慣れてくれた。会話だってはずむ。
「ずっとこうしていたいくらい」
ルイーゼの言葉が耳に残る。
帰り道、一緒に夕日を見ながら僕は「そうだね」と答えた。
今言ったって伝わらないのに。
「さてお嬢さん、練習の成果は出たかな?」
ふざけながら手の甲にキスすると、頬を染めてクスクス笑う。
かわいらしい。
この子を振ったバカはどこのどいつだ。
あなたの元上司です。




