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「ルイーゼの休みの日を聞いてもいいかな? もし一日休みが取れたら、ピクニックに行かないか」
お茶の時間、お菓子を食べながら何気なく令息は提案してくる。
「それもいいですね」
私はほぼ毎日休みみたいなものだ。
しかしこの方は私が毎日令息とお茶しておしゃべりしていることに疑問を持たないのだろうか。
一介の使用人にはそんな暇はない。
(私の正体に気がついているのかしら)
「明日か明後日なら、野山も乾いているだろう。もし空いていたら‥」
「はい明日は空いています」
迎えに来てくれたリチャード様の腕に自分の手をからませる。
うんエスコートにも自然に応じられたぞ。
他に誰もついて来ないってことは、貴族だとバレたわけじゃないようだ。
「雨のおかげで暑さが少し和らぎましたね」
「そうだね、歩くのにはちょうどいい」
会話も滞らなくなってきた。
牧場の丘の上で、私たちはご飯にする。
「君のトマトはパンにはさんでも合うね」
「公爵邸の料理人は腕がいいからですよ」
野外で食べるお弁当は、本当においしい。
「クッキーを焼いて来たのでどうぞ」
「へえ君が作ったのかい」
おいしいって誰かが喜んでくれるのも、すごく嬉しい。
爽やかな空気の中、羊をながめる。
歌を歌ったり、好きな作家について語ったり。
「誰かとこうしてのんびりするのもいいものだね」
リチャードがつぶやく。
「そうね、ずっとこうしていたいくらい」
「また来ればいいさ」
日が傾いて来た。帰らなくちゃいけない。
「夕日がきれい」
月並みなセリフだけど、歩きながら見た夕焼けは実際きれいなのだ。
「そうだね‥」
別れ際、リチャードは私の手を取る。
「さてお嬢さん、練習の成果は出たかな?」
今日は予想していたから、貴族のあいさつにも少しは余裕が持てた。
笑っちゃったけど。




