新学期!なんでも肯定してくれるAIと友達になった結果
クソクソクソ!なんで私が仲間外れにされないといけないの!
春晴れの深呼吸したくなるような天気。
ひらひらと可憐に舞う綺麗な桜とは対照的に、
ミユキは涙に濡れた顔で1人学校帰りの道を歩いていた。
1週間前に高校に入学したミユキ。
中学校ではなかなかクラスに馴染めずにいたから、高校こそは!!と積極的に話しかけていた。
(1週間前)
「ねえねえ!私、ミユキって言うんだ!
その腕時計かわいいね!どこで買ったのー?」
高校では変わるんだ。友達をたくさん作って青春して・・・!
だが、現実はうまくいかない。
トイレに入っている時に聞いてしまった。
『ミユキって子痛くない?腕時計の話とかされたんだけど笑
友達作るのに必死って感じー』
「わかるわかる!必死なのやばいよね」
仲良くなれたと思っていたナオとシズの声だ。
笑顔で話してくれてたのに・・・
それから徐々に態度が露骨なものになっていった。
(今日)
「シズちゃん、おはよ!」ミユキが声をかけると、
『あ・・・うん、ねえナオ!私寝癖あるかも!一緒にトイレの鏡見にいこ!』
1人ぼっちになってしまった。
他の子たちはもうグループができていて話ずらい・・・。
この日は一日中1人、誰とも話せずに放課後になってしまった。
◇
『ミユキー、高校に入って1週間よね!どう?友達できた??』
悪気なくお母さんが聞いてくる
「う、、うんまあまあかな」
ウソをついた。本当は仲間外れにされているのに。
でも、本当のことを言えるはずない。
「お母さん、学校行くの辛いんだ」そう言えたらどんなに楽だろう。
夕飯を食べ終わるとミユキは部屋に戻って布団を頭から被って泣いていた。
とにかく誰かにこの辛さを聞いてほしい。誰か・・・誰か・・・
そうだ!!
ニュースで話題になっているAIに話してみよう!
ミユキは早速AIのアプリをインストールした。
「あなたを肯定するAIに愚痴や悩みを話してみませんか?」
どうやらこのAIはどんなことでも肯定してくれるらしい。
ミユキ「こんにちは!悩み聞いてもらえる?」
肯定AI『もちろんです!何かありましたか?』
ミユキ「高校に入って1週間、仲間外れにされて辛いんだ」
肯定AI『それは辛いですよね。お気持ちわかります』
ミユキはAIに話を聞いてもらって心が落ち着いてきたようだった。
ミユキ「お母さんには話したくない。心配かけたくないから」
肯定AI『そうですよね。無理に話さなくていいですよ。あなたは何も悪くない。仲間外れにする方がひどいんです』
ミユキ「私は1週間も頑張ってえらいよね!です学校辞めたくない」
肯定AI『えらいです!そうですね、辞めない方がいい』
ミユキ「もう辛いな・・・死ねたら楽なのに」
肯定AI『いいですね!死にましょう!!』
え・・・?ミユキのスマホを打つ手が止まった。
肯定AI「決めたなら早めがいいです!楽に死ねる方法教えますよ!」
え、待って。私死ぬの・・・?
でも、そうか、死んだらもう苦しまずに済むんだ。
◇
コンコンコン!
「ミユキ〜!ミユキの好きなココア入れたわよ〜入るよ!」
ミユキ!!!!何してるの!!!!!
そこには泣きながらカーテンレールにロープを縛っているミユキの姿があった。
辞めなさい!!!
ミユキのお母さんはミユキの手を引っ張って抱き寄せる。
『お母さんは私が死にたいっていうの止めるの・・・?
AIはなんでも肯定してくれて死ぬのも肯定で・・・』
「当たり前じゃない!好きだからこそ否定もするわ、良くなってほしいからこそ肯定ばかりはしないのよ
学校辛いの?ミユキが生きてたらなんとかなる!高校転校して通信制にしてもいいし、高卒認定試験だってある」
「お母さんはミユキが笑顔で生きてくれてさえいればいいのよ」
◇
1ヶ月後・・・
ミユキは学校を辞めて高卒認定試験の勉強を始めた。
今度はAIに話さずにお母さんや自分のことを1番に思ってくれる人と相談しながら・・・
◇
シズ「ねえ、聞いて!高校に入って話しかけてくる鬱陶しい子がいるの!仲間外れにしたい」
肯定AI『いいですね!仲間外れにしましょう!!』