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4 反逆 -1

 

 その影は音もなく塀を飛び越えたかと思うと、次の瞬間には、もう車の窓に顔を出していた。

 すっと助手席に滑り込み、ふぅっと身体を沈める。

「任務完了」

 いつもより爽やかな様子に、俺は相棒の頭を撫でてやった。もちろん嫌がらせだ。

「全部つけられたか」

「もちろん」

「痕跡は?」

「誰に訊いているんです?」

 得意げに顎を上げているアキラだが、これは褒められたことではないと、分かっているのだろうか。

 とりあえず、坂巻家の様子を知るために、盗聴器を仕掛けさせてもらった。もちろん、正太にも内緒だ。正太に話してしまうと、たとえ本人が承知しても、無意識に目が探してしまい、なな美と母親にバレる心配がある。

 しかも不審に思われて、問い詰められると、正太はあっさりバラしてしまう心配があった。

 誰もいない昼間を狙ったが、正面の門には防犯カメラが付いていた。だから、空き巣のように、横っちょから入らせてもらったわけだ。

 その道のプロを自認しているアキラには、お茶の子さいさいだろうが、何度も言うが、それは自慢することではない。

 俺は盛大にため息をついてやったが、アキラはご機嫌に鼻歌をうたっていて、気が付かない。

 まぁだが、とりあえず、アキラは任務以外ではこの特技を披露していない。それが、この仕事を始める時の約束だった、らしい。

「ごくろうさん」

 任務をこなしたことにはかわりないので、俺はおざなりでも、ねぎらいの言葉をかけてやった。

 アキラが嬉しそうに頷く顔を見て、またため息をつきたくなる。

 これでは、キリがないな。

 思いとどまって、俺は次に気持ちを切り替えた。


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