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7つの願い  作者: yamico
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ep.7

私は魔法を使えるようになった。

思っていたやつとは少し違うけれど。


私は毎日フルルに会いに行くようになった。

フルルは精霊のことを色々教えてくれた。

精霊は自然界にあるいろいろなものに宿っているんだって。

試しに木をつついてみるとおじいさんのような精霊が出てきた。

「こんにちは、私はソラです。」

「俺は樹の精霊、ツツラ。」

ツツラは歌うのが好きなんだって。

風になびいて枝を揺らして、なんだか渋い歌を歌ってくれた。

私は拍手をして「ありがとう」と言った。

「こんなことでもよければいつでも呼んでくれ。」

そう言うとツツラは消えていった。


『バターには程遠いわね。』

マユちゃんは今必死に風魔法を練習中だった。

「マユちゃんが上手に風魔法を使えるようになったらグルグル混ぜるのをやってほしいな。」

『そうね!きっとできると思うわ!』


私はそれからも石や水、火の精霊なんかも呼び出してみて挨拶をした。

みんな姿は違ったけれど、どの子も小さくてかわいかった。


────


おばあさんと村でパンを売っているときに私は召喚について書いている本はないかと聞いてみた。

「そんな難しい魔法の本ならあのクソジジイが持っているかもしれんな。」


そしてパンを売り終えると、おばあさんはそのおじいさんのところへ連れてきてくれた。

「おい、クソジジイ生きてるか?」

おばあさんは村はずれの小さな家のドアを思い切り叩いた。


「なんじゃ!クソババアめ!ピンピンしとるわい!」

ドアを勢いよく開けて背の高い細身のおじいさんが出てきた。

二人は睨み合って今にもケンカが始まるんじゃないかと思った。

「あ、あの…私、ソラと言います。」

おじいさんは私を見ると優しい顔になった。

「おや、小さなお客様も一緒であったか。これは失礼いたした。どうぞお入り下され。」

おじいさんは紳士的にドアを開けて家の中に招き入れてくれた。


「こんな村のはずれにようこそ。私はビルと言います。よろしくソラ。」

「よろしくお願いします。あの、これお土産です。」

私はおばあさんに言われたとおり、来る前に花畑をみつけて蜜をもらってきていた。


「これはいったい?」

「お花の蜜です。甘いものがお好きだと聞いて。」

「それはそれは!なんとも貴重なものをありがとう。それでブウよ、頼み事はなんじゃい?」

おじいさんはおばあさんを睨みつけた。

私はそれをドキドキしながら見守った。


「さすがビルじゃな。まぁ、わしの話を聞きなさい。」

そう言って私の召喚魔法の話をした。

「なんとこの小さなお方がそんな魔法を使えるとは!少し待たれよ。素晴らしい本がありますぞ。」

おじいさんは目を輝かせながら壁にギッシリと詰まっている本棚へと向かった。

おばあさんは「ありそうじゃよ」と小声で言ってニヤリと笑った。


これじゃない、これでもないとおじいさんは本棚の本を引っ張り出しては戻していた。

おばあさんは勝手にキッチンでお茶を淹れていた。

私は恐る恐る「いただきます」と言って、お茶をごちそうになった。

おばあさんの家にあるお茶よりもフワッとお花のにおいのするお茶で、これも美味しかった。


「あったぞ!」

お茶を飲み終え、おばあさんは食器も洗い終わった頃にやっとおじいさんが戻ってきた。

大きな古い本はホコリがかぶっていた。

おじいさんは杖をひとふりすると本はみるみるうちにきれいになった。

「わぁ!きれいな本ですね!」

真っ赤な表紙の本には金色で装飾が施されていた。

いかにも高価で貴重な本のようだった。


「これは世界に10冊しかないと言われている貴重な本じゃよ。まぁ、読みたいと思う人が少なかったからかもしれんが。召喚魔法を使える者なんぞそんなにおらんからな。」


「これはさすがに、クレとは言えんな。」

おばあさんはしかめっ面をした。

「もちろんじゃ!貴重なものであるからして、悪い奴にみつかって盗まれるのも恐ろしい。読みたいならうちに来るしかないぞ。」

「ここに来たら読ませてくれるんですか?!」

「もちろんよいですよ。私はそんなにケチではありませんからね。」

「おばあちゃん、村に来たときにここに来てもいい?」

「あぁ、店番は一人でできるからな。その間おじゃまするといい。」

「ビルさん!ありがとうございます!」

「なあに、ジジイはいつも暇をしているのであります。いつでもいらっしゃいな。」


私は少しだけ、と言って本を見させてもらった。

中も立派な紙で作られているのがわかる。

召喚について詳しく書いてあるようだった。

難しくて読んでも意味がわからなかった。

挿絵もついているのでなんとなくはわかる。


「理解するには時間がかかりそう。」

「そうだろうね、子供向けの本ではないからね。」

おじいさんは私の頭をポンと撫でた。

「なあに、急ぐことはありませんよ。あなたはまだ幼い。ゆっくり紐解いていけばいいのですよ。」

おじいさんは優しくそう言ってくれた。

「はい。また来ます!ありがとうございます!」


────


帰り道、おばあさんはおじいさんの話をしてくれた。

二人は幼馴染で昔からあんな感じなんだって。

二人とも負けず嫌いでことあるごとに競い合ったみたい。

「そのおかげで二人とも魔法の腕前はかなり上がったと思うわい。」

おばあさんはそう言って楽しそうに笑っていた。

きっとケンカするほど仲がいいっていうやつだ。

楽しそうに笑うおばあさんを見て、私もなんだか嬉しくなった。


そうして私は村に行くたびにおじいさんの家を訪れるようになった。

ときどきおばあさんはパンや焼き菓子を持たせてくれた。

花の蜜もおじいさんには大好評だった。

おじいさんは行くと嬉しそうにテーブルに本とお茶を出してくれた。


おじいさんはマユちゃんに興味を示した。

私が本に夢中になっていると、マユちゃんとおじいさんは二人で魔法の特訓をしたりしていた。

おじいさんは昔、魔法学校で先生をしていたんだって。

そしてなんと、おばあさんも先生だったんだって。

おばあさんの昔話はあまり聞いたことがなかったので少し新鮮だった。

「ブウは自分のことを話すのが苦手でありましてな。悪いやつではないのですがね。」

「うん。すごく優しくていい人です!」

私がそう言うと、おじいさんは自分が褒められたかのように嬉しそうにした。


おじいさんは私が本当の孫じゃないとわかっていた。

私はおじいさんにも本当の話をした。

「生まれ変わりとは!なんとも興味深い話ですな!」

私が本を読んでいる間、おじいさんはマユちゃんに質問攻めだった。

私の過去のことやマユちゃんのことを詳しく話して聞かせていた。


おじいさんの家に来ると時間があっという間に過ぎてしまう。

おばあさんは昼くらいにお迎えに来てくれる。

そこで三人でお昼ご飯を食べるのが恒例になった。

三人で話をしながらご飯を食べるのが好きだった。

とても温かい時間だった。


────


おじいさんの家に通うようになって10日くらい過ぎた頃、おじいさんの手助けもあって召喚魔法について少しわかるようになった。

召喚できるものは多種多様にあり、生き物だけではなく物も召喚できるのだという。

物とは言っても無限にどこかから呼び出せるのではなく、ある場所にある物を目の前に呼び出すといったことである。

だからこの世界に存在しないものは召喚できないと、そういうことなんだろう。


私は試しにおばあさんの家からウサギのノートを召喚してみることにした。

おじいさんは目を輝かせてそれを見守ってくれた。


本に書いてあるとおりにイメージを膨らませ、ここに現われよと念じながらテーブルを杖で叩いた。

そうするとテーブルの上にノートが現れたのである。

スマホは例のごとくピコンと音が鳴り、

【召喚(物体)のスキルを習得】

と出た。

おじいさんは「ソラと連動しているのか!」と感激したようにスマホをいじっていた。

「ビルさん、召喚できました!」

「おぉ、そうでしたな!できるとは思ってましたが、目の前で見るとなかなか感慨深いものですな。」

おじいさんは召喚できたことよりスマホの方に興味があるようだった。


私はそのまま元に戻す魔法を使ってみた。

精霊と違って勝手には消えてくれない。

私は机の引き出しの中に戻るようイメージをして杖でノートを軽く叩いた。

ノートはあっという間に消えていった。

うまくできたかは帰ってからのお楽しみだ。


「ソラには才能があるようですな!しかし魔力は使うと減るものです。一気に使うのはよくないでしょう。」

そう言われてみればなんだか疲れたような感じがする。

「使っても回復しますか?」

「もちろん!使い切ってしまうと回復するのに時間がかかってしまいますが、うまくやればすぐに回復しますよ。加減はだんだん自分でわかるようになるものです。ソラはまだきっとその加減がわからないでしょう。ですから無理は禁物ですよ。明日は動物の召喚をしてみましょうね。」

「はい!ありがとうございました、先生!」


私はおじいさんのことを先生と呼ぶことにした。

おばあさんは先生という言葉に敏感で最初はおじいさんのことを睨んでいた。

おじいさんは知らんぷりして、私もおばあさんの話は聞かなかったことにした。

どうやら先生時代の話はしたくない気がしたからである。


おばあさんの過去についてはきっと話したくない部分があるのだろうと思っている。

だから私は聞かないことにした。

必要があればきっとおばあさんは話をしてくれるだろうし。


────


そうして私は動物を召喚できるようになった。

狩りに行かなくてもウサギを手に入れることができる。

鹿を召喚するとおじいさんは喜んだ。

おじいさんは鹿に「ありがとう」と言って魔法で絞めて解体した。

鹿肉は初めて食べたけどなんとも言えない美味しさがあった。

私も心の中で『鹿さんありがとう』と言った。


召喚魔法は使い方次第では便利なものなのだろうと思う。

だってどこに何があるのかを知っていれば、いつでも目の前に呼び出すことができるんだもん。

泥棒さんが使えば金銀財宝ザクザクだ。

その話をするとおばあさんは、

「ソラを悪いことに使おうとする者が現れるかもしれない。この魔法のことは人には話しちゃいけないよ。」

と言った。

私もそうだと思って頷いた。


今はどこに何があるかわかっていないと召喚できない。

でも本の読み進めるとレベルを上げると存在していれば何でも召喚できるようになると恐ろしいことが書かれていた。


心を正しくあり続けないと身をも滅ぼすことにもなりうるとおじいさんに言われた。

私はなんだか恐ろしくなった。


────

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