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7つの願い  作者: yamico
14/26

ep.14

「なんて書いてるの?読めないや。」

私は新しいスキルがまったく何かわからなかった。

『やみをすべるものって書いてるわ。意味はよくわからないけど、なんだかヤバそうな感じね。』


「闇魔法の使い手の天敵なのかもしれんですぞ。」

「でも吸い取ることはできるけども、自分から攻撃したりはできないよね。」

「スキルの名前からするとやはり闇属性のものっぽい気がするんじゃが。」


闇属性のことについては情報が少なすぎて見当をつけるのにも一苦労だった。

そして結論はまったく出ない。


「とりあえず畑は復活できそうじゃ。」

おばあさんはそう言って杖を天に向けた。

キラキラと光と水滴が辺り一帯を覆った。

そして小さな芽が1つ、また1つと顔を出した。

「いい魔法ですね。本当に素晴らしい。」

おじいさんはキラキラ光る畑を嬉しそうに眺めていた。


「さて、わからないことをあれだこれだと言ってても仕方あるまい。」

「そうですね。ソラは身を守る方法を考えておかないとダメですね。」


そして私は他にできることはないかいろいろ試すことになった。

適正はなくても使える魔法が何かあるかもしれない。

メジャーな属性のものは全滅だった。

あとは無属性にかけるしかないという結論に至った。


「無属性の魔法は無限にありますからね。何かできることがあるかもしれませんよ。」

おじいさんの持っていた本は焼けてしまった。

おばあさんの家には専門書はない。

「王立の図書館が王都にありました。もしかしたら瓦礫に埋もれてそれ系の本があるかもしれません。」

そう言われたので私は神経を集中させた。

無属性魔法について書かれている本がどこかにないか。


目を閉じると瓦礫に埋もれたたくさんの本が見えた。

物語、歴史書、料理のレシピもある。

魔導書や教科書があればいいのに。

集中するとそれがどこにあるのかわかった。

薄っすらとそれは光る。

本のタイトルは未確認だったけれど、絶対にそれだと確信した。


目の前に分厚い本が現れた。

「おぉ!いいのがありましたね!これにはたくさんの無属性の魔法のことが書かれていますよ。」

おじいさんは目を輝かせて喜んだ。

「外に出て片っ端から試してみましょうか。」


本にはたくさんの種類の魔法が載っていた。

無属性魔法はその多種多様な種類と使い手の少なさからユニーク魔法とも言われていた。

まったく同じ魔法を使える人は少ないんだって。

転移や亜空間を作る魔法もこれと同じで、使える人はすごく少なくて、効果は似ていても使う人によって違う魔法に分類されたりするって書いている。


なんだかとても遠回しで難しく書いているけれど、それって『個性』ってやつだよね。

人それぞれにあるもの。

前の世界にだって魔法じゃなくても得意なことってある。

それもみんな違うから、それも個性だ。

どこに行っても同じなんだ。


そう思うと少し気持ちが軽くなった。

私はなぜわざわざ前世の記憶を持って生まれてきて、こんな地獄のようなものを見せられているのかと、不安になることがあったから。


前の世界でも、目の前で人が殺し合うことはなくても、見えないところで悪口を言ったりして人を傷つけ合っていた。

何も変わらない。

ここもあそこも同じだ。

同じだけ、心が傷ついている。


────


いろいろ試してみた結果、私にできる魔法をやっとみつけた。


【真空(包装)のスキルを習得】


パンを焼きたてのまま保存したいなぁ、って考えていたら使えた魔法だ。

物を真空状態にしたり解除したりできる。

誰にでも解除できるならパンを売るときにも使えるのにな。

「残念だけどあまり人の役にはたちそうにないです。」

私ががっかりしていると、おじいさんはいつも、

「どんな魔法も使い方次第ですよ。それを考え続けるのが面白いじゃないですか!」と言ってくれる。

不思議とそう言われると、なんだか面白く感じる。

言葉が1番の魔法かもしれない。


「真空の魔法も応用できそうじゃありませんか。真空を出して野菜を切るとかできませんか?」

おじいさんは想像豊かだ。

私はおばあさんに大根を1本もらって杖を向けた。


真空で切る。

頭の中には昔お父さんが見ていた古い映画に出てくる道着を着た男の人が浮かぶ。

その人は気合で人をバタバタと倒した。

触れずに人を倒していくので、私はそれがなんだか面白くて何度も再生してもらったんだ。


それをイメージしてみた。

「アチョーッ!エイッヤァーッ!」

私は空手のように空を斬った。

おじいさんは突然奇声をあげる私に驚いていた。


準備運動はできた。

私は真っ白な大根に向かい合った。

真剣勝負でもするような気分だ。

私は合掌して大根に一礼した。

深呼吸して呼吸を整える。

吸って、吐くタイミングで大根を斬りつける。

「ヤァーッ!」

大根は微動だにしない。


「その叫び声は必要ですかな?」

「うん、なんとなく。でもダメだったみたい。」

おじいさんは大根を確認している。


「ソラ、見事に切れていますよ!」

そしてスマホがピコンと鳴った。


【真空(攻撃)のスキルを習得】


「あまりに鋭すぎて大根も切られたことに気がつかなかったのでしょうね。」

おじいさんはそう言って笑った。

大根は触れるとバラバラになっていた。


「こんなにめった斬りになるとは思わなかったよ。このスキルは封印だね。」

「そうですね。精度を上げるまでは封印ですね。あと、掛け声についても検討が必要ですね。」

「はい…。」


その後も時間ができるたびに私はおじいさんと魔法の研究をした。

今のところ、成果はあまりない。


壊された村には人が少しずつ戻ってきた。

人々は魔法をうまく使って壊れた村を復興させ始めた。

壊れたら直せばいい。

なくなったら作ればいい。

命があることが1番大事。

村の人々はそう言いながら、文句一つ言わずに村を再建していた。

この世界ではこんな理不尽が突然やってきたりするんだって。

そのたびに人は負けずに立ち上がってきたんだって。

「生きてりゃなんとかなるものさっ!」

飲んだくれの爺さんが踊りながら魔法で畑を耕していた。

不真面目でもいい。

それが生きることに繋がるならそれでいい。

おじいさんはその酔っぱらいを見ながらそう言っていた。

私には少し難しかったけれど、きっと大事なことなんだろう。


────


そして平和なまま時は流れた。

村はすっかり元気を取り戻した。

おばあさんはパン屋さんを再開した。

1つ変わったことと言えば、おじいさんはそのまま一緒に住んでいる。

家を増築しておじいさんの部屋を作ったのだ。

「ヘンテコな家になったじゃないか。」

おばあさんはそう言っていたけれど、なんだか嬉しそうだった。

私はマキナさんの部屋だったところに戻った。

おばあさんはやっと一人に戻れると言っていたが、私はちょっぴり寂しかった。


夏になり、私は学校に行くことをすっかり忘れていた。

おばあさんは「ソラには必要ないかもしれんな」と言うので、「私もそう思います」と言って学校の話はなくなった。

今なら先生くらいの知識が頭に入っている気がする。


毒の研究から派生して、私はいろんな薬を作れるようになった。

毒以外の植物の勉強もしたのだ。

スマホの力も借りた。

この世界ではまだみつけられていない植物や菌類の有効的な作用を利用して薬を作り出した。

おじいさんは家の近くに丈夫な実験室を作ってくれた。

その壁に衝撃を吸収するようなバリアをつけたいなぁ、って思っていたらスマホがまた鳴った。


【吸収(衝撃波)(火炎)(雷)(物理攻撃)のスキルを習得】


と出た。

私はどうやら、実験室の壁にバリアを施すことができた。

おじいさんは喜んで、他の建物にもかけてくれと言った。

私はどれくらい効果があるのかわからないけれど、バリアをかけて回った。


作った薬はすぐに真空状態にした。

揮発性のものがあるけど、この世界の技術では栓ができなかったからだ。

中には熟成しないといけないものなんかもあった。

細かい温度や湿度の調節の必要なものもあった。


そして温度や湿度を調整できればいいのに、って思ってたら、またスマホが鳴った。


【空気操作(温度)(湿度)のスキルを習得】


なんて都合のいいことでしょうか。

おじいさんは真空のスキルからの派生だろうと言っていた。


私は欲しがったら何でもできるんじゃないかと思って、「ステーキよ出ろ!」とか「お寿司になれ!」とかやってみたけど無駄だった。

魔法って気まぐれだ。


こうして私は薬屋として十分に仕事になるくらいの実力がついた。

噂を聞いた村の人がやってくるようになった。

人気なのは痛み止めと湿布薬だった。

村の高齢化は進んでいる。

若い人はすぐに大きな街に行っちゃうんだって。


毒の勉強をしたことによって神経系の勉強もたくさんした。

毒には神経に害を与えるものも多いからだ。

その派生でいい方に促す作用のあるものをみつけた。

万人向けではなかったけれど、重度の神経系の疾患を治すことができるようになった。


【補修(人体)のスキルを習得】


このスキルを見て、おじいさんは「ソラ、これは治癒魔法と差異ないかもしれんですな」と言った。

集中すればレントゲンのように人間の内部を見ることができるようになった。


しかしこれも万能ではなくて加齢によるものなんかは修復できなかった。

「全員を不老不死にされたら神様も困るからじゃろ。」

おばあさんはケラケラと笑いながら私の頭を撫でてくれた。


そうしているうちに私の実験小屋はいつの間にか診療所のようになった。

元々おじいさんがそれに近いことをしていたのもあるので、村からこちらにやってくる人が増えた。

おじいさんは来る人たちのために外に椅子やテーブルを作った。

いつしかそれに屋根がついて、誰かがどこかから持ってきた椅子やテーブルも増えて、村の人たちの憩いの場のようになった。

元気になった人たちも散歩がてらここを訪れて、他の人たちとおしゃべりして帰って行った。


いつも賑やかで、おばあさんは「うるさいねえ」と、少し嫌な顔をしていたけれど、みんな笑うことが増えた気がする。


そしてそんな平和な日々は続いた。

あの黒い化物のことなんて、みんな忘れてしまったかのようだった。

でも私は忘れていない。


次にあんなのが来たら私は立ち向かう。

みんなをまたあんな目に遭わすことは絶対に許さない。


────

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