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7つの願い  作者: yamico
10/26

ep.10

季節は巡り、冬になった。

寒くはなるけれどこの辺では雪は降らないみたい。


「もうすぐ6歳になるかも。」

『かも?』

「私がこの世界で生まれた日があやふやなんだよね。多分、死んだ日がこっちでの誕生日だと思う。」

『そう、それなら私が覚えているわ…』

マユちゃんは悲しそうな顔になった。

『12月3日よ。』

「123だね!覚えやすいね。」


「ソラの生まれた日かい?」

おばあさんは晩御飯を作りながら振り向いた。

「うん、どうやら明日みたい。」

この世界で過ごしてきてわかったのだけど、こちらの人たちは日付をあまり気にしない。

季節を感じるくらいだった。

「誕生日というものがあるのかね。ここらの人たちはそんなもの気にしないからのぉ。」

「前の世界ではね、誕生日になるとケーキを食べるんだよ。」

「ケーキとはどんなものじゃ?」

マユちゃんはスマホでイチゴの生クリームのホールケーキの写真をおばあさんに見せた。

「イチゴはわかるが、この白いのは砂糖かい?」

「これは生クリームっていう牛のお乳から作るものだよ。」

やっぱり生クリームもこの世界にはないみたい。


「用意してやりたいところじゃが、この世界にはないものじゃね。そのかわり、ソラの好きなものをたくさん作ろうかね。」

「やったー!ありがとう、おばあちゃん!」


ルナはすくすく育っていて、2ヶ月が経った。

話す言葉もしっかりしてきてちゃんと会話になる。

でも私たち以外の人がいるときにはニャーとしか言わない。

とても賢い猫ちゃんだった。


毒の勉強も進んでいた。

基礎知識はしっかり頭に入った。

あとは実践になるのだけど、ものがものだけになかなか始める勇気が出ない。

失敗して誰かが死んでしまうようなことがあってはいけない。


────


「ソラ、いいものをもらったよ。」

いつものようにおじいさんの家に行くと、嬉しそうにそれらを私に見せてくれた。

「これって、実験道具?!」

「そうですぞ、昔の先生仲間にソラの話をしたら譲ってくれたのです。」

そこにはビーカーやフラスコがあった。

この世界ではガラス製の食器は少ない。

きっと貴重なものなのだろう。

「先生、ありがとうございます。でもどこでこれらを使えばいいですか?」

村で実験して毒が漏れたら大惨事になる。

「実はその人がですね、人里離れたところに実験室を持ってましてな。それを使ってもいいと言うことです。どうします?行ってみますか?」

「はい!」


私とおじいさんはその実験室に向かった。

森の向こうにあるのだそうだ。

おばあさんにお弁当を作ってもらえなかったけれど、おじいさんがサンドイッチを用意してくれた。

私はウキウキで歩みを進めた。

ルナは危ないかもしれないのでおじいさんの家で留守番をさせた。

不服そうな顔をしていたけれど毒と聞いて、「ルナは寝て待ってるです。」と言って丸くなった。


────


小さな森を抜けるのに30分くらいかかった。

そしてやっと目指す小屋が見えてきた。

「先生!あれですね!」

「そうみたいですな。」


先生は玄関脇にある植木鉢の下から鍵をみつけてドアを開けた。

中は少し消毒薬みたいなにおいがした。

私はすぐに病院を思い出した。

胸をキュッと掴まれたような気分になった。


「ソラ、気分でも悪いのですか?」

「ううん、このにおいでちょっと昔を思い出しちゃっただけです。」

おじいさんは「大丈夫ですよ。」と言って頭を撫でてくれた。


カーテンを開けてもなんだか薄暗い部屋だった。

おじいさんは杖をひとふりして部屋を掃除した。

さっきまでホコリをかぶっていた家具や床がピカピカになった。


私はきれいになった大きなテーブルにおじいさんの家にあったビーカーやフラスコを召喚した。

「その魔法は本当に便利ですね。手ぶらでどこまでも行けますな。」

おじいさんは感心したようにウンウンと頷いていた。

「使い方を間違わないように気をつけています。」

私がそう言うと、「いい心がけです」とまた頭を撫でてくれた。


「では始めましょうか?私は毒の知識はそんなにありませんが。何から学びたいですか?」

「まずは自然界にある毒の抽出と解毒剤を作りたいです。」

「なるほど。では解毒剤のあるものから始めましょうかね。中には解毒剤のないものもありますからね。」

私は本を見ながらキノコや葉っぱを召喚した。


小さく切り刻んで茹でたり絞ったりした。

途中でにおいを嗅いでしまって、先生は慌てて私に解毒魔法をかけてくれた。

「死に至るほどの毒ではないですがね、気をつけてくださいな。」

「はい、ごめんなさい。」

その時スマホがまた例の音を出した。


【毒無効(植物)のスキルを習得】


と出た。

「ほぉ、毒に対して耐性ができたということでしょうかね?」

「試してみますね!」

私はさっきにおいを嗅いでしまった液体のにおいをまた嗅いだ。

「先生!今度はなんともないみたいです!」

「なんと素晴らしい!それを私にもつけることは可能ですかな?」

「毒無効を先生に…やってみます。」

私は杖を持ち先生が毒無効になるようにと強く念じた。

杖から紫の何かが出てきて先生を包んだ。

「えぇー?!先生大丈夫ですか?!」

紫の何かはすぐに消えた。

「どうでしょうね?試してみましょうか。」

そう言うと先生はさっきの毒の液体を舐めてみた。

「先生そんな!!失敗していたらどうするのですか!!」

私は焦って本の解毒剤のページを見た。


「ふぅむ、なんともないようですな。私にも毒無効がついたかもしれません。私にもスマホがあれば確認できたのですがね。」

おじいさんはそう言うとクスクス笑いだした。

「ふぅ、よかったー。でもまだわかりませんから、無理はしないでくださいね!」

「そうですね、心得ました。」

「植物以外のどくの耐性もつくように同じことをしましょうかね。」


私たちは蛇やサソリの毒で同じことをした。

小さな毒のある魔物やカビやら菌までも召喚して同じことを繰り返した。

その度にスマホは鳴り、最終的に


【毒無効がアップグレードしてすべての毒に対して無効になりました】


と出た。

先生は「私もアップグレードしてくださいな」と言ったので同じようにやってあげた。


そうして実験を進めていった。

二人とも毒無効になってしまったせいで毒の効果がイマイチわからなかった。


あっという間にお昼の時間が過ぎていた。

おばあさんが心配しているかもしれない。

「夢中になってしまいましたね。」

先生も焦ったように「急いで帰りましょう」と言った。


先生は風魔法を使って飛ぶことができた。

私を抱えると空高く舞い上がった。

「先生!こんなこともできるんですね!!」

まるで遊園地のアトラクションのようだった。


前の世界で一度だけ行ったことがある。

ジェットコースターのような乗り物は背が足りなくて乗れなかった。

乗りたかったと泣いた私をお父さんとお母さんは観覧車に乗せてくれた。

すごく高いところまで上がって、下にいる人たちが小さく見えたっけ。


そんなことをゆっくり思い出す間もなく、あっという間におじいさんの家まで帰ってきた。

家の中でおばあさんはお茶を飲んでいた。

「おかえり。」

おばあさんは明らかに怒っていた。

「あの、何も言わずに遠くに行っちゃってごめんなさい。」

「すまない。もっと早く帰ってくる予定だったんですが。」

私たちはおばあさんに向かって頭を下げた。

「ルナから聞いたよ。次はわしが弁当を作ってやる。」

私は笑顔でおばあさんに抱きついた。

「そうしてほしいってお願いしようと思っていたの!おばあちゃんありがとう!」

おばあさんはびっくりした顔をしてそれから少し照れているようだった。


帰り道、私は実験室でやったことをおばあさんに話して聞かせた。

「毒無効とな?帰ったらわしにも頼むよ。」

「うん、やってみるね!」

おじいさんと空を飛んだ話をすると、おばあさんは少し怒っていた。

「子供を抱えて飛ぶなんて、何かあったらどうするつもりなんじゃ。次会ったら叱ってやろう。」

おばあさんはそう言ったけれど、空を飛ぶのは楽しかった。

私にも風魔法が使えたらよかったのにな。


────


次の日から私とおじいさんは毎日実験室に行った。

おばあさんは毎日お弁当を作ってくれた。

最初は私の分だけだったけれど、いつしかおじいさんの分も作ってくれるようになった。

空を飛んだことを許してくれたのかもしれない。


実験室での時間はとにかく楽しかった。

おじいさんも新たな発見があるようで二人で失敗したり成功したりと何があっても楽しくできた。

そのかいもあって私は毒の抽出から解毒剤まで魔法でできるようになった。

材料さえあれば器具を使わなくても作ることができる。

「毒を使うことはないでしょうがね、もしかしたらこの先、誰かの役に立つかもしれませんね。」

「うん。この毒は痛み止めになるって。」

「なるほど、量さえ間違わなければ薬になるというのはこういうことなんでしょうね。」


作った毒はその日のうちに処理した。

誰かがみつけて悪用されては困る。


「精度が上がれば杖から直接毒を出せるようになるでしょう。」

「使うのは怖いな。」

「そうですね、魔物に襲われたり悪い人に襲われたり、とにかく命の危機にあるとき以外は封印でしょうね。」

「わかりました。」

「薬になるものはしっかり量や濃度を覚えてくださいね。」

「はい!」


そうして一旦この実験室に来るのは終わりになった。

いつでも使っていいと言ってもらえているのでまた何かあったら借りることにした。


────


私は帰り道でおばあさんに謝った。

「おばあちゃん、私の魔法、あまりおばあちゃんの役に立たないやつばっかりでごめんね。」

おばあさんはびっくりした顔でこちらを見た。

「チビっ子が何を言っとるんじゃ!そんなもの最初から期待なんてしとらんよ。それにソラの魔法は役に立つじゃろ。忘れ物をしたときとかにな。」


パンを村に運ぶのを召喚魔法で済ませることもできる。

しかし村の人に私の魔法を知られないほうがいいと言って今まで通り荷車で運んでいた。

小さなものや目立たないものなら隠れて召喚もしていたんだけど。


「あとは闇魔法が使えるみたいなんだけどね、先生にもわからないって。」

「わしも見たことないのぉ。」


名前からしていいものじゃない気がした。

それならばこのまま知らなくてもいいかもしれない。


────


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