1-5 クリスマスプレゼント
「...二人ともちょっと待った!」
義孝と徹はほぼ同じタイミングで叫んだ。
「うん?」
「うん?じゃないよ。朝田、ちゃんと説明するまで、どこにも行かせませんから!」
「えぇ...」
義孝の口調を聞いて、ふと笑ったやな。
「じゃあ、いつも通りで。」
義孝の命令により、四人は再びソファに座る。
徹が記録して、義孝が質問し、綿が答えて、そしてやなが補足する。
「まず、死者は九時頃に家に戻って、そして十時頃に殺されましたね。でしたら、犯人はいつ死者の部屋に入りましたの?」
「九時に、死者と一緒に彼女の部屋に入った。」
「証拠は?」
「エアコンがついてるし、死者がわざと母親に声かけたのも怪しかった。」
「...じゃあ、十時に殺された死者は、なぜ十時半に音を立てたのですか?」
「あれは鳥。」
「鳥...?」
「部屋中めちゃくちゃだし、花にも噛む跡がついてるし、鳥が窓から入ったと推測できる。」
やなは頷いた。
徹は、情報をただ聞くだけでそこまで判断できたやなのことを、さらに尊敬した。
「しかし、死者を見つけたとき、窓は開いていませんよ?」
「それは犯人が閉めたんだ。」
「...窓を閉めるなら、最初から開けなければいいでしょ?死者の母親にバレたら余計まずいでしょうに。」
「鳥のことは犯人の予定外だった。それに、当時彼はそこにいなかった。」
「どういう...?」
「当時の彼はGLOWWORMにいるんだ。」
「GLOWWORM?入ったってことですか?」
「そうだ。」
「どうやって?」
そこで、やなは手を挙げた。
「GLOWWORMの表口にドアスコープがあります。裏口にはなさそうだけど、別に関係ありませんね。彼はおそらくとある道具を使って、そこからドアの鍵を開けたと思います。」
「やなが言ってるその道具は、Lの形に曲がった鉄線と思っていい。鉄線をドアスコープから入れて、鍵をこうやって移動させれば、鍵を開ける。」
綿は徹の仕事のために、紙に道具の形や使い方を書いた。
「やなの言う通り、犯人はこうしてカフェに入って、その袋を取って、同じやり方で鍵を閉めて、そしてこっそり死者の部屋に帰った。」
「どうして?彼が用意したプレゼントをわざわざ死者の部屋に置く必要は...?」
「いや、彼が用意したのではない。死者が用意したのだ。」
義孝はふと思いついた。
「死者の母親が言った、その服ですか?」
「そう、しかしそれは服だけじゃなかった。覚えてる?死者の母親が言ったのは『服を選んだと言いました』、つまり彼女は娘がどんな服を買ったのかを見ていなかった。」
「服だけじゃないなら、何ですか?」
綿は笑って、何も言わず、ただやなを見つめていた。
「...マタニティウェアでしょうか。」
「マタニティウェア...!?」
やなの言葉に、徹と義孝は戸惑った。
この二人は一体どこからどう見て、マタニティウェアという答えを出しただろう。
「...ちょっと待って、朝田。君たちの憶測だけじゃありませんよね?」
「憶測といえば憶測だけど、一応根拠はあるよ。」
「根拠?そんなの見当たりませんけど。」
「焦るな。死者の母親は言ったよね、娘との関係がかなりいいと。だったら、どうして死者は犯人、つまり彼氏をこっそり連れて帰ったの?おかしいと思わない?
「それに、どうしてさっきまで幸せそうなカップルが、彼女の家に帰ったあと、彼氏が彼女を殺したの?解釈しにくいじゃん。
「つまり、その彼氏が彼女の部屋に入ったあと、彼には理性を奪われるくらい、大変なことが起こったと推測できるんだ。
「カップルにとって大変なこと、そして服という曖昧な言い方、そう解釈しかないじゃない。」
義孝は頭を何回回させて、ようやく綿の推論に追いついた。
「ってことは、死者は妊娠したことを彼氏に教えて、しかし彼氏はそれを受け入れなかった、だから彼女を殺したの?」
「そうだと思う。」
「じゃあなんでそのプレゼントを取るの?ホタルさんを利用するために?」
「まさか。先ほど言った通り、彼は理性を失ったからの犯行だ。理性が戻ったら、かなり後悔したのだろう。」
「後悔で...だからプレゼントを死者の手元に。」
「...そうだな。」
徹はノートを軽く閉じた。
「あとは俺に任せろ。」
徹が瀨間を説得したあと、彼は罪を認めて、そして死者の母親からの証言により、罪が少し減った。
クリスマス当日の夜に、瀬間が罪を認めたあと、ホタルもすぐ釈放された。
彼女が警察署から出た瞬間、最初に見たのが、ベンチで座っている三人だった。
「どうして鳥だとわかりました?」
「それはですね...」
「義孝、一々気にしすぎるとモテないぞ。」
のんびりの綿、真面目なやな、戸惑う義孝。
今年はちょっと遅かったけど、サンタさんは忘れなかったね。
ホタルは少し微笑んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん。」