自分を好きになる
「そ...!やなさんは君を助けるために、どれだけ苦労をしたか、なのに...!」
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
兄を失ったせいか、さっきまで大人しかった関ちゃんがほぼ暴走寸前となった。
「お兄さん...お兄さんが死んだんだ...!だから私も死ぬ!」
「その話、本当?」
冷たい声が病室に響き渡り、関ちゃんも思わずその見知りな女性のほうを見た。
「お兄さんが死んだから、自分も死ぬと?
「それを聞いたお兄さん、きっと悲しむと思うわ。」
どんどん。
ゆっくりな足音なのに、彼女の怒りが伝わる。
僅かな悲しみを帯びて。
「お兄さん、希生さんだっけ?
「犠牲と似たような発音だね。
「でも、ぎせいではなく...きせいなんだ。
「どういう意味なのか、わかる?」
関ちゃんの両目を見つめ、その女性は冷たく語る。
このような言葉が言える人は、今この場所には彼女しかない。
「あの人も、君たちの両親も、君には『希』望を抱いて、自分の『生』命を大事してもらいたいの!」
そばにいなくても、空の上から導いてくれる。
それこそ、一番星。
「ホタル、ありがとう。」
「やな...」
泣き疲れて、眠りに落ちた関ちゃんを警察の二人に任せて、やなとホタルは廊下に出た。
「二人とも、無事で本当によかった。殺人事件と殺人未遂に巻き込まれたと聞いたとき、すごく心配したんだから。」
「心配させてごめん。カフェのほうは?」
「輝星ちゃんに任せたが、一人だと大変だろうから、そろそろ帰らないと。」
「...うん、早く帰っていってあげて。綿と義孝のほうは私から言っておくわ。」
「じゃあ任せた。」
どんどんどん。
足音が遠ざけていく。
とんとん。
もう一人の足音が、真逆な方向から現れた
「...?」
「真田。」
「安倍...さん。」
「勝負について話す前に、まず一つ話したいことがあります。」
「...?」
「ベランダーで話しましょう。」
光の声は、やなにはとても、とても深い自己嫌悪に聞こえた。
「関ちゃんとの会話を聞きました。」
「...一生私を恨んでくれたらと思いましたが、ホタルに解決されてしまいました。」
「本当にどうしようもない人ですね。」
「そうかしら?」
「恨まれてもいいけど、恨むことはできないんですね。」
「...?」
「あんた...!賢いのに、なんでこういう時だけバカなの!」
「私...が?」
「あんたよ!真田やな!私を恨めよ!」
「え?」
「恨めよ!あんたの目を潰したのは私、誘拐したのも私、朝田綿のスーツ姿が見れなかったのも私のせいでしょう!どうして!どうして恨まない!好きな男のためならなんだってする、こんな卑劣な私を恨んでよ!」
ポタポタ。
涙の音。
とんとんとんとん。
走り出す音。
心が崩れ落ちた音。
真田やな、追って。
どうして?あの人の言った通りじゃない。
追って。
私がこうなったのはあの人のせいだよ。恨んで当然だよ。
追って。
あんな卑劣な人!
立ち止まらないで。
どんどんどんどん。
走り出す音。
歯車が回り出した音。
「安倍...光...!」
「...!」
匂い。
音。
四感を全部使って、あの人の位置を確認。
そして、抱き締める。
「そんな君のことを、私は好きでい続けるから!」
「真田...!」
「だから!」
そんな自分を、君も愛してあげてよ。




