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打草驚蛇

「かなりポジティブな推理ですね。」

「...失踪事件は大抵、したかされたか、二択だけですよね?」

「その通りです。」

「された、の場合だとしたら、友夏理さんには今日が最後だなんて、そんな予知みたいな話ができるはずがありません。」

「そうですね...誘拐される可能性を想定しなかった、という場合もありうるのでは?」

「それもありえますが、誘拐されたということは、その『お兄さま』が一番の容疑者ですよね?」

「はい。」

「しかし、友夏理さんには兄がないし、出迎えしてくれる相手もいません。」

「想像で出来た人なので、友夏理さんを誘拐するはずがないと。」

「その通りです。友夏理さんは自ら行方不明になったのです。」

「だとすると、最後の証言が一番の理由、あるいは推理の材料となっていますね」


光と話を交わしたあと、やなはうつむいた。

「義孝、君はどう思う?」

「え!?」

やなに呼ばれることを想定しなかった義孝は、少し驚きと怯えを混ぜた声で返事した。

「ないの?なんらかの見解があるのかなと。」

「一応あるけど...」

「では聞かせてください。参考にしたいので。」

「うん...でも、まずお二人に質問したいことがあります。」

義孝は姿勢を整って、随川の両親のほうに向いた。

「先週の火曜日に、友夏理さんが出かけるとき、なにか違和感のあることはありますか?」

「先週の火曜...そういえば、友夏理がゆうちょのカードを机に忘れたのを、俺が気付いて渡しました。そのとき家内はたしか皿を洗っているだろう。」

「カード?友夏理さん、お金を下ろして何に使うのかを言いましたか?」

「服を買いに行くと。男装ならどこで買ったほうがいいかと聞いてくれて...友夏理に彼氏でも出来たのかなと思った」

「男装を買う...奥さんのほうはどうですか?」

「強いて言うならば、晩ごはん一緒に食べれないと言われたことぐらいです。」

「よくあることですか?」

「...いいえ。あの子、いつも同じ電車で帰るので、家についた時間もほぼ同じぐらいです。」

「そうですね。では、その日、遅くなった彼女に聞いてみましたか?」

「もちろん聞きましたが、友夏理は『今日仕事遅くなる』と答えくれました。」

「まもるさん、この話しは?」

「嘘ですね。その日、特に残業する必要はありませんでした。」


「うん...」

義孝は目を閉じ、うつむいて必死に考えていた。

「...!わかりました!友夏理さんは彼氏さん、すなわちそのお兄さまと出かけたが、彼氏に軟禁されてしまいました!朝田!早く助けに行かないと...!」

「義孝、すごーく残念ですが、三割ぐらい正解。」

「え...!?」

「義孝にここまで言えるってことは、朝田綿、君には真相がわかったの?」

「十中八九、ね。ただし、今言ってしまったら、草を打って、そこに潜んでいる蛇じ気付かされることと同じなんだ。」

「草を打つ...朝田、その蛇とは?」

「バカだな、義孝。蛇というのはもちろん...」

綿はふと笑った。

「殺人事件の犯人しかないじゃない。」

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