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1-1 クリスマス殺人事件

「...やなちゃん?義孝です。」

「義孝?どうかしましたか。」

やなは電話を持ちながら、ゆっくりとソファに座る。

「今晩のクリスマスイヴのイベント、三人で一緒に行こうと約束したことなんだけど、朝田と僕はこれから、論文発表の記者会見の打ち合わせをしなくちゃいけなくて...」

「記者会見?それは嬉しいことですよ!大丈夫です。来年また一緒に行きましょう。」

「ありがとう。じゃあまた。」

「はい。二人とも、頑張ってください。」

電話を切って、やなは大きく息を吐く。

「さて、今夜は何をしようか。」


一方、カフェ「GLOWWORM」には、忙しいホタルの姿が見える。

クリスマスの飾り付けは、昨日来てくれた彰子と颯太のおかげで、なんとか間に合った。

前もって準備しててよかったと、ホタルは心の底からそう思った。

「ホタル姉さん。これはどこに?」

「えっと...その二人のお客様に!」

「はい!」

少女はコーヒーを持って、窓際の席に座っている二人の客に届ける。

「お待たせしました。こちらはあなたのアイスコーヒーで、こちらはあなたのマキアートです。」

「あなたすごいですね!注文した人すら覚えているんですか!」

素晴らしい記憶力を持つ少女に、客の二人は感服した目線を送る。

「恐縮です。ただ、真冬なのに夏服を着て、そしてアイスコーヒーを注文したので、寒さに得意な方だと思いました。そしてこちらは、一週間前もご来店頂き、同じマキアートを注文したからです。そういえば、お二人はちょうど、前回と同じ席に座っていますね。それでは、ごゆっくりどうぞ。」

客の二人は、少女の記憶力を称賛しながら、コーヒーを飲もうとしたら、コーヒーカップのハンドルが二つとも窓側に向いていることに気付きました。

偶然、でしょうか。

アイスコーヒーを頼んだ人が左利きだってことを、二人の会話に一度でも出てこなかった。


「今日もお疲れさま。」

最後の客の背中を見送って、ホタルは少女に言う。


「そんな!ホタル姉さんのカフェに働けるなんて、本当に嬉しいです。」

「私も。たくさんのお客さんが君を称賛したよ。」

少女の輝く眼差しを見るたびに、ホタルはあの人を思い出す。

もし今の彼女も見えるなら、きっと少女と同じように、些細なところまで気を配れるのでしょう。

「...ホタル姉さん?」

「ううん。私たちも早く片付けよう。」

「はい!」

ここはかつて、朝田綿、黒沢義孝、真田やな、そして名瀨ホタルが集まる場所。

彼らは物語と情報、推理を語り合っていた。

のんびりの綿、真面目なやな、戸惑う義孝と、耳を澄ますホタル。

「ホタル姉さん、何か欲しいクリスマスプレゼントでもありますか?」

「プレゼントか...」

もし、本当にサンタクロースがいるのだとしたら...

「過去の...時間が欲しい。」

いつも微笑んでいるホタルの真剣な顔を見て、少女は息をひそめた。

彼女は、ホタルの過去を知らない。



「ピンポン!」

ある男が、扉の「CLOSE」表示を無視して、扉を開いた。

「お父さん!」

「すみません、今日の仕事は少し遅れました。」

ホタルは微笑んで、大丈夫ですよと言いながら、外にいる女性に頷く。

「今日は礼節さんも一緒にですね。」

「はい、ちょうど退勤の時間が同じでした。輝星は迷惑かけていませんか?」

「そんなことありません。むしろすごく助けてくれましたよ。」

ホタルとその男と話しているうちに、少女は自分の鞄を取って、二人の元に帰った。

「じゃあホタル姉さん、また明日!」

「うん!また明日!七海さんも運転気をづけて。」

七海は微笑んで、輝星と一緒に車に乗った。

車を見送ったホタルも、軽く背伸びをした。

「...私も帰ろうか。」


不意に、ひとつの袋が、ホタルの視野に入った。

窓辺の席に、一つ丁寧に飾られていた袋があった。

クリスマスイブ当日なので、ホタルは当然のように、それをクリスマスプレゼントだと思った。

だとすると、その客が今晩中に戻る可能性はかなり高いし、もしホタルとすれ違ってしまったら、クリスマスプレゼントとしての意味がなくなる。

しかし、帰るのが遅くなると、母親に心配される。

「やなに頼んでみよう...いや、たしか綿さんと義孝さんと、三人でショッピングをする予定だった。」

忘れられたそのプレゼントを見て、ホタルは思い出してしまった。

数年前まで、彼女もこんな風に、毎年あの人からクリスマスプレゼントをもらっていた。

そしてあの人はいつも、彼女が一番欲しかったものを用意してくれた。

「...まぁ、いいか。」

ホタルは家に電話をした。

「ママ?私ホタル。今晩はやなに誘われたので...うん、明日昼頃に帰る。わかった。おやすみ。」

電話を切ったあと、ホタルは窓辺と扉付近の灯りを残し、他の灯りをすべて消した。

彼女は窓辺の席に座り、町中の灯りを眺める。

そして、知らないうちに眠りに落ちた。


翌日、ホタルは呼び鈴で目覚められ、扉の方を見た。

そしたら、外に立ってる大量な警察に気付いた。

すぐ扉を開いたホタルは、手錠をかけられた。

「えっと...?」

「名瀨さん、俺たちはあなたを謀殺事件の容疑者として、逮捕します。」

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