おとぎ話
川に追随して、友人とともに、夏に真理を求める。
回りくどいね。
でも、これが私の名前。間違いなく私の名前。
随川友夏理。
両親健在、兄と妹一名ずつ、ペットなし。
両親は山の奥に畑を持っていて、そこに行く山道の危なっかしさを考えると、いつ転んで死んでもおかしくない。
妹は幼稚園児で、年かなり離れているので、あまり好きじゃないな。
お兄さま……兄さんは、世界一優しい人。
おとぎ話の王子様みたいに、毎日退勤した私を迎えに来てくれて、道中気をつけてなどを言ってくれて、見えなくなるまで見送りをしてくれた。
大好きで、大事で、誰よりも私のことを愛してくれた人。
私もきっと、彼の大好きな人で間違いないだろう。
大学から卒業したあと、私は宮野企業に入って、今ではもう一人前の課長となった。
理事長夫婦と会見したり、雑談もしたりするので、きっと頼られているのだろう?
理事長はとても立派でカッコいい方、お兄さまには及ばないが、なかなかの人間だと思う。
でも、理事長がこの企業に入るために、苗字を変え養子になるまでしたと聞いた。なんて品のない。
理事長夫人は宮野企業のお嬢様で、結婚後そのまま理事長夫人となったが、どうやら才能というものがなく、企業の経営はすべて理事長に任せたらしい。
二人とも大嫌いだけど、仕方ない。給料がかかっているもの。
会社の同僚といえば、それほど悪くはないけど、よくミスをするんだよね、本当にむかつく。
できないやつばっかりだけど、まぁ私仕事できるんで、いつも残業しなくて済む。
退勤後、私はいつも徒歩でお兄さまと約束した場所に向かい、そして途中には妹がいる幼稚園に通りかかる。
私を見たらすぐ逃げる。恥ずかしいかな?
だって、友達にこんなお姉さんがいると知られたら、きっと羨まされるのだろう。
幼稚園を通りすがった先は、あの有名なレストラン。
フランス料理のお店だったらしく、食べてはみたいが、まぁまずいだろう。
理事長夫婦みたいなバカしか行かない店に見える。
そしたら、私はお兄さまの優しい出迎えのおかげで、無事に家に帰れる。
お風呂に入って、スマホでもいじったら、暖かいお布団に入って、翌朝のお兄さまの出迎えを待つだけ。
すべてがきれいで完璧。
私は、一晩だけの眠り姫のように、目覚めたら、きっと王子様が迎えに来てくれるはず。
そう、王子様ならきっと、ガラスの靴を持って私を迎えに来てくれる。
だって私が、その一番美しい存在なんだから。




