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3-1 金色の指輪

三月中旬のあの件のために、名瀬家はケイの部屋を本格的に片付けし始めた。

三人で住んでいた家に、一人を失って、そしてもうすぐ一人を迎えることとなった。


「ホタル、兄ちゃんの本をそっちの部屋に移していい?」

「うん...どっちでもいいけど。」

「そっちに移そうか。君も数学好きでしょう。」

も...。

ホタルは微笑んだ。

「じゃああとで移すね!」


あの連続殺人事件のあと、入獄した名瀬影の正体を、ホタルは母に言えなかった。

影の正体を話すと、危うくはホタル兄妹のことまでバレてしまう。

言えないんだ。

「そういえばあの子...」

「影くん?」

「うん。なんか不思議ね。この間見せてくれた写真、なんだか懐かしい気がした。」

影を家に迎えるように、ホタルは朝田に手伝ってもらって、名瀬家の親戚にプレッシャーをかけた。

そしたら、影の「両親」から、影を預けたいお願いが来た。

「母さん、影くんを受け入れてくれて、ありがとう。」

「バカなことを言うな。ホタルの頼みだもの。それに...」

「それに?」

「君だけじゃない。私も、影くんに何か過去があると思う。」

最初の頃、名瀨母は断った。

ホタルに家計を背負わせている今、影をもらったとしても、彼にいい環境を与えないだろうと。

さらに、相手の理由は子供の性格が難しいこと。

名瀬母は、二人の子供の未来を潰したくなかった。

しかし、ホタルは母にこう言った。

影くん、悲しい顔をしているんだと。


「家族とうまくいかなかったから、難しい性格になったのかもしれない。」

「兄さんならきっと、彼の心を開いてあげることができるのだろう。」

「先生をやってたもんね。」

「...そうだね。先生たるもの、子供たちを正しい道に導かなくちゃね。」

「そうじゃない。」

ホタルは戸惑って、母のほうを見た。

「ケイは言ってたよ、数学先生になりたい理由。子供を正しい道に導くなんかじゃない。」

「そうじゃ...ないの?」

「一人でも歩けるような人に導く先生になりたい、と。」

「...!」

一人でも歩けるような人。

今のホタル、もう卒業できたのかな。


「そういえばホタル、あの子、今日は来てないの?」

「...祐也くん?昨日家まで送ったとき、今日は用事があるから来れないんだって。」

「ここ数日、毎日手伝ってくれたよね、本当にいい子。」

「そうだね。」

「なんだか二人目の息子ができたみたい。」

「ふふ、兄さん焼きもちするよ。」

「ケイが?あの子の怒る姿、想像できないわ。」

二人は笑いあって、部屋の片付けを続いた。


テーブルを片付いたあと、ホタルは雑巾で、空っぽのテーブルを拭こうとした。

「カーン。」

引き出しを拭いているとき、急に金属の音がした。

ホタルは引き出しから、そのものを取り出した。

「指輪...?」

小さな赤い宝石が乗せている、金色の指輪だった。

丁寧な仕上がりだったが、手作りな指輪だった。

「母さん...!兄さんに金色の指輪があったの?」

「金色の指輪?あるけど、どうしたの?」

指輪を持ったまま部屋から出たホタルは、ちょうど来ようとした母と会った。

「さっき引き出しでこれを見つけた。」

「うん...?違うね。これじゃない。」

「これじゃない?」

「ケイの指輪、こんなんじゃなかったはず。」

名瀨母は指輪を見つめていた。

「うち、代々の息子には、金色の指輪を継承させているんだ。」

「それを兄さんに渡したの?」

「なにせ、君たちのお父さん、他界したからね。成人式のときに渡したよ、純金の指輪をね。」

「そうなんだ。」

「それでケイが、その指輪を加工したいと言い出して。」

「いいの?」

「まぁ、君たちのお父さんもやりたかったし、お祖父さんの許可をもらったけど、加工する前に亡くなったから、ちょうどよかったかもね。」


「これが、兄さんが加工した指輪?」

「さぁ...一度見せてもらったが、確かたくさんの糸で編んだ感じだった。」

「うん...編み物みたいな感じ?」

「そういう感じ。」

指輪を手にとって、ホタルはその宝石を見つめていた。

「金のほうはわかったけど、宝石のほうは?」

「買いに行ったのでは?」

「ルビーって結構高いはずだよ。小さい人工なやつだったら少し安くなるけど...」

ホタルはその指輪を見つめ、真相が決してこんな簡単なものではないと感じた。

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