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2-11 笑い合う

「紗穂さんなら、凶器の処分も簡単にできますし、白柳教授を疑うような言動もありました。

「それで白柳教授が逃げたのも考えられます。

「しかし、一人特別な人物が現れました。」

やなが言うまでもない。

白土由起夫だ。


「白土由起夫さんは、何も知らなくても、白柳教授を庇うと思うのでしょうか?

「ないと思います。たとえそうだとしても、紗穂さんや白柳教授と同じ証言を提供できるはずもありません。

「つまり、由起夫さんはすべてを目撃しました。」

徹は由起夫の証言を思い出した。

真犯人を知っていると。

「ここで問題です。もし彼が真犯人が...例えば紗穂さんだと知っていたら、どうして言わない?

「あえて紗穂さんと波彩さんの前で、自分は真犯人を知っていると主張するのは、あの二人に自分の偽装を証言してもらうためです。

「由起夫さんは、乃瑠さんが私を誘拐したことを知らないでしょう。彼が知っているのは、実験所の事件だけなはずです。

「もし列車殺人事件がいなかったら、話はどうなるのでしょう?

「おそらく『白土由起夫が殺人後に逃走』なんてことになって、白土由起夫が犯人になるのでしょう。

「つまり由起夫さんは、紗穂さんと白柳さん、二人を守ろうとしています。」


「待ってください!やなさんの言ったように、黒駒紗穂が黒須教授を殺しただとしても、動機は?」

「そこは僕が説明しよう。」

綿は自薦した。

彼でさえ、まさかやながほとんどの事件真相を解説してくれるとは思わなかった。

やなが復帰する前兆かもしれないと思うと、綿も嬉しくなかった。

「黒須教授は刃物、おそらくガラスにやられたのだろう。」

「海藻養殖用の?」

「そう。廊下に水溜まりがある、みたいな証言があったよね?」

「黒駒紗穂も白土由起夫もその話をしなかった。白柳恵弦の証言だ。」

「だったらひとまず置いておこう。黒須教授の首の傷口から、海水の成分を検出したんだね。」

「そうか。養殖容器を使ったから。」

「誰かが海藻の養殖容器を砕き、そして犯人が一枚のガラス破片を持って、黒須教授を殺した。ここまでは大丈夫か?」

「うん。」

「やなの仮説によると、犯人が紗穂さん。しかし、紗穂さんは一体どの研究室の容器破片を持って、黒須教授を殺したのか?」

「それは黒須の研究室だろう?近いし。」

「つまり、紗穂さんは殺人をする前に、わざわざ向こうの部屋の容器を砕けて、破片を取りに行くのか?」

「それは...ないな。」

「そう。紗穂さんは破片を持ちながら接待室に入った。しかし、もし容器を割れたのが紗穂さんだったら、黒須教授も当然破片に警戒して、殺されなかったんだろう。」

「というと...?」

「容器を割ったのは紗穂さんではなく、黒須教授だ。」


「自分でガラスを?なんで?」

「どの研究室のガラスを割ったのかを考えてみよう。」

「それは白柳研究室のだろう!じゃなくても、白柳の学生たちの研究室の。」

「ほう?どうして?」

「白柳は結果を出した上、お前みたいな学界でも有名な人を招いたんだ。彼から見れば羨ましかっただろう。」

「そこはよく考えたね。そう、そして白柳の証言を合わせて考えると、黒須が、白柳が研究している海藻の容器を割ったと考えられる。」

「だとすると、殺人動機を持つのが白柳教授では?」

「彼だけじゃないと思う。紗穂さんは言ってた、黒須教授を憧れていると。そんな彼女が、別研究室の結果を壊している黒須教授を見かけたら?」

「それだけで人を殺すのか...!?」

「それだけ...か。黒須のその行動は、研究に対する冒涜でもあるし、彼の敗北を宣言したのと同じようなことさ。」

「自分じゃ結果を出せない...か?」

綿はうなずいた。

「紗穂さんが許せなかったのは、こっちだろう。」


徹に説明されたあと、黒駒紗穂と黒須時夜は殺人を認めた。灰野波彩は共犯者で、白土由起夫と白柳惠弦は業務妨害で、全員移送された。

「二年...か。」

海藻全部壊されたと知った白柳恵弦は、頭から海藻を培養するのは二年くらいかかると言った。

二年後。やなが大学から卒業する年でもある。

「綿、私は大丈夫だ。」

「大丈夫じゃない。また今日みたいになったらどうする?」

「怖かったの?」

「...同じ服だと気付いたら、もう何も考えなくなった。」

「お守りまで奪われたもんね。」

「やな...」

「君は今回、心配を学んだね。」

「昔みたいに『愛』を学んだ方がいい。」

「君はもうそこから卒業したでしょ。」

やなは笑った。しかし綿は笑えなかった。

もう、やなと笑い合うことができないから。

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