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2-4 予想外の出場

列車が駅についてからしばらく、数人の警察が綿を包囲した。

「ご苦労。」

乗務員にお礼を言ったあと、一人の警察が綿を起こし、近くの席に座らせた。

「いいえ。その...彼を連れていくんですか?」

「いいえ。ちょうど室蘭に向かうので、この列車に乗ることになりました。」

「そうですか。車掌さんに発車命令をお伝えしましょうか?」

「まだダメ。この男の事件はともかく、この女性の事件はまだ終わってない。」

その警察は、死者の顔にかけた白い布を取り、少し観察したあと、ゆっくりとかけ直した。

「おい、ここは俺が見張っておく。お前らは乗客に、この格好をしていた女性の目撃情報を集まれ。」

「はい!」

警察たちが前の車両に進んだあと、最後尾の車両には、綿と乗務員、死者、警察四人だけ。


「...あのう!ひとつ話したいことがあります!」

自分の疑いを晴らすつもりがない綿を見て、乗務員は待てずに自分から言い出した。

「彼は乗車してから数分後に、こちらの女性を探すことを私にお願いしました。」

「ほう?おい、お前、この女性とはどんな関係?」

綿は無力に警察を睨み、そして言い出す。

「これ以上演じなくて結構。乗車してから今までの間で、お前が本物の警察じゃないと判断できる手がかりがもう十分にあった。」

「な...!」

「そっちの目的は知らないが、僕はお前の邪魔をしない。安心しろ。」

「...」

その警察は言い返せずに、綿を見つめていた。

そして、ゆっくりと言い出す。

「さすが朝田教授です。失礼いたしました。こちらも、あまり余裕がなかったので。」

「...どういうこと?」

「もし、協力していただければ、事件の現状と、ひとつあなたが知りたい秘密を教えてあげます。」

「...」

今度は、綿が黙り込んでいた。

やなが死んだ今、綿はもうこれ以上生きるつもりはない。

しかし、好奇心はまだ叫んでいた。

「やななら、やれ!と言ってくれそう。」

綿は微笑んだ。

「わかった。言ってくれ。」

その警察は、嬉しくうなずいた。

「私が白柳恵弦です。そして...」

彼は、隣の死者に指差した。

「彼女の視神経の怪我は、三日間以内のことです。」


一方、徹は専門車両を乗って、先に室蘭の臨海実験所についた。

殺人事件の現場なので、すでに規制線が張られていた。

徹は規制線を上げ、くぐり抜いて、実験所内部に入った。

「現場の状況はどうした?」

「手がかりの調査と、サンプルの送付も終わりました。」

「わかった。そうだ、尋問の結果は来たか?」

「はい。ファイルをいただきました。まとめはこちらです。」

徹は、尋問の結果ファイルをもらい、各人の証言を確かめた。

「皇さんと黒澤の証言は一致している。名瀨さんも、朝田さんの行動を証明できる。くらいかな?」

「はい。」

「...了解。列車の方は進展あるか?」

「すでに一組を向かわせた。容疑者二人が乗っていた列車なので、そのままこちらに向かう予定です。」

徹はうなずき、実験所二階にある殺人現場に向かった。


「初めまして、解説させていただきます、灰野と申します。こちらでは秘書をやっています。」

階段口に立っていた女性は、徹にお辞儀をした。徹もすぐにうなずいた。

「お願いします。二階に行きましょう。」

「はい。」

「二階にはどんな部屋がありますか?」

「二階には、二つの研究室があります。それぞれひとつの接待室と、二つの実験室があります。」

「全部で六つの部屋がいて、ひとつの研究室には三つを使える感じでしょうか?」

「はい。そして教授をなさっていたのが、黒須教授と、白柳教授です。」

「彼らが同じ二階にいるのか。研究方向が似ているからですか?」

「その通りです。二人とも、海藻の応用についての研究をしています。白柳教授は、医学との結合を研究しています。黒須教授は、染色工程との結合を研究しています。」

「喧嘩になりませんか?」

「ないと思います。研究方向が全く違いますから。つきました。こちらが黒須教授の接待室です。」

灰野はグローブをつけ、扉を開けた。

部屋の中から、血の匂いが鼻についた。

「自分は研究者出身で、血の匂いには慣れていますが、佐藤さんは大丈夫でしょうか?」

「それを言うなら、こっちもとっくに慣れましたよ。」

「それは、失礼いたしました。」

徹は手を振り、灰野に気にするなと伝えたあと、接待室に踏み入れた。

時間は午後五時半。

綿が室蘭につくまで、あと一時間。

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