私達は深怪究明団②
静寂に包まれる中、フルミがポツリと呟いた。
「これで、良かったんだよね……」
フルミはこれで妹を生き返らせる機会を失ったことになる。けれど、そのおかげでフルミはこれ以上、道を踏み外さずに済んだ。
「よく決断できたよ、フルミはさ」
小鳥遊はそうフルミに声をかけた。
「これからは、抱え込まずに俺達をもっと頼れ」
夜凪は軽く笑ってそう言った。
「うん」
フルミは頷いた。
そんな中、羽川が口を開いた。
「海道フルミ、パソコンを介して拉致監禁した人々は生きているんだよね」
「ええ、お詫びの品とともに、記憶を消して返すつもりよ」
「行方不明になった、犯罪組織の奴らは?」
その問いかけに、フルミは一瞬黙った。小鳥遊達も羽川の質問の意図は察していた。しかし、今まで協力してきたといえど、羽川は警察だ。羽川がどんな判断を下すかはわからなかった。
「……全員殺した。妹の仇だったから……どうする、私を逮捕する?」
羽川は軽く目を瞑った。そして、目を開けると、優しい口調で声をかけた。
「お前だったんだよな、組織の奴らを捕まえるために、匿名で俺に助言をくれていたのは」
「……ええ」
「そして、今回の行方不明事件について、深怪究明団を頼るよう伝えてきたのも、こういうことだったんだな」
「……」
すると、羽川は笑ってこう言った。
「この事件は普通に考えて、警察の領域を超えてるな。真実は明らかになったわけだ、よって俺はこれ以上関与しない。組織のボスについてだけを報告することにするよ。後は好きにやってくれ」
羽川はそう言うと、軽く手を振りこの部屋を出て行った。
フルミはしばらく固まっていた。そして、ハッとした様子で、小鳥遊と夜凪の方を見た。
小鳥遊も夜凪も優しい顔でフルミを見ていた。
フルミは、戸惑った様子を見せながらも、軽く息を吸って吐いた。そして、口を開いた。
「皆、迷惑かけてごめん.....そして、ありがとう!」
こうして、行方不明事件は解決した。
あの後、フルミはしばらくの間事後処理に追われていた。
そして後日、グループの拠点で一周年記念パーティーが開かれることとなった。
一周年記念パーティー当日。
パーティーの準備は既にできている。小鳥遊と夜凪と秋山は拠点であと一人が来るのを待っていた。あと一人からは、10分ほど遅れると連絡が入っていた。
「いやー、無事に一周年迎えられてよかったなー!」
秋山は元気そうな様子でそう言った。
「ったく、一人で突っ走りやがって。こっちは、大変だったんだぞ」
夜凪が文句を垂れるようにそう言うと、秋山は笑って答えた。
「いいじゃねぇか、結果オーライだ! それに、俺の直感も間違ってなかったわけだ」
「もぅ、皆んな勝手に行動する人ばっかりなんだから」
小鳥遊はそう言ったものの、久々のこの感覚に楽しさを感じていた。あとは、あと一人が揃えば。
そして、10分後、部屋の扉が開いた。
そこには、いつも通りのスーツにシルクハットを被ったフルミの姿があった。
「おっ、きたきた」
「来たな」
「おせーぞ」
フルミはそんな三人を見て、少し照れくさそうな様子を見せていた。
「えっと……」
久しぶりに深怪究明団のメンバーとして戻ってきた、フルミは何と言えばいいかわからない様子だった。
そんなフルミの様子を見て、小鳥遊は声をかけた。
「おかえり、フルミ」
フルミはハッとした様子を見せた。そして、少し間をおいて、笑顔で答えた。
「うん! みんな、ただいま!」